第8章 「ふげん」における運転・保守技術の高度化

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理者による検討結果は、同等であることを確認した。
■ARPSの全サイクルの燃焼度は、熟練炉心管理者の結果に比べて16.4日長いことが分かった。
■ARPSの取出平均燃焼度は、熟練炉心管理者に比べて0.01GWd/t少ないことが分かった。
■ARPSのシャッフリング体数は、熟練炉心管理者に等しい体数であった。
■ARPSの最小限界熱流束比及び最大線出力密度は、熟練炉心管理者と同じく、許容範囲にあることを確認した。
■ARPSの計算所要時間は、単サイクル当たり1.2時間であった。そのため、燃料取替パターンを迅速に策定することが可能であり、実際の燃料取替計画にも適用可能であることを確認した。
■ARPSと熟練炉心管理者が作成した燃料装荷配置状態は、大きな違いがないことを確認した。
(4)まとめ
 ARPSは、熟練炉心管理者と同等の長期燃料取替計画を作成することが可能であることを確認した。つまり、ARPSは、GA及びSAを用いることにより、局所解に陥ることなく、優れた炉心を構築することが可能であることを確認した。
 ARPSの計算時間は、GUIを用いることにより、熟練炉心管理者よりも短時間に適応度の高い炉心を選定することが可能であることがを確認した。そのため、炉心管理者の労力を、大幅に低減することが可能である。
 上記の理由により、ARPSは、実際の燃料取替計画に容易に適用可能であることを確認した。さらに、この計算アルゴリズムは、すべての炉心の燃料取替計画に適用可能であると考えられる。

8.4.7 運転支援システム
(1)はじめに
 「ふげん」は、ふげん発電所の主要系統全体を模擬したATR運転高度化支援装置(コンパクトシミュレータ)を開発し、平成2(1990)年9月より運転員の運転訓練に活用している。このATR運転高度化支援装置は、フルスコープのシミュレータと同様に、プラント挙動を模擬することができ、ふげん特有のプラント特性の学習、運転訓練、更に運転技術の高度化に関する検討など、多目的に使用することができる。
 「ふげん」の運転員の運転操作訓練は、特徴が比較的類似しているBWRの運転員訓練用に開発され
、BTC(BWR Training Center:(株)BWR運転訓練センター)のシミュレータで行っている。しかし、重水・ヘリウム系、独立2ループ構成の原子炉冷却系、ATR特有系統の運転操作訓練は、不可能であり、また、炉特性やプラント動特性等の把握は、机上学習により行っていた。そこで、ATR特有系統の運転操作訓練、炉特性、プラント動特性等の把握が可能であり、更に運転操作手順の検討、プラント制御装置の開発、事故事象の解析等にも利用可能なATR運転高度化支援装置(以下、「FATRAS」という)を開発し、運転員の教育訓練等に有効に活用している。
 ここでは、FATRASの目的、システムの構成及び機能、シミュレーションモデル、FATRASを用いた運転学習・訓練等について述べる。
(2)FATRASの目的
 FATRASの開発目的は、次のとおりである。
ATRプラント特性の学習及び運転操作技術の向上
 FATRASは、BTCにおいて訓練ができない、主としてATR特有のプラント動特性の学習、インターロック等の習得、重水水位上昇操作から制御棒操作、ホウ酸濃度制御による定格出力にいたるまでの起動操作、出力降下から復水器真空破壊までの停止操作等のプラント通常操作、各種制御系の故障や原子炉冷却系配管破損事故等の異常時対応操作等の運転操作技術の向上を図った。
運転操作手順の改善及びATRプラント制御装置の開発
 運転操作手順の改善やプラント制御装置の開発等、運転高度化のための検証装置として利用した。
(3)システムの構成
 FATRASは、学習者のマンマシンインタフェースである模擬操作盤、シミュレータの制御操作を行うインストラクターコンソール及び各種演算処理を行う計算機システムで構成されている。
 システム構成図を図8.4.55に示す。
模擬操作盤
 模擬操作盤は、実機の中央制御盤の主要な機能を模擬しており、プラントの機器操作と、それに伴うプラント挙動の監視を行うための装置である。運転操作上重要な給水制御装置等の監視操作器は、実機を模擬した小型のスイッチや指示計等で構成し、操作盤面上に配置して操作感覚を実感できるようにしている。その他の機器の操作やプロセス量の監視は、3台のタッチスクリーン付きCRTで行うことにより、幅約3mという小型の操作盤で多数の監視操作


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