第8章 「ふげん」における運転・保守技術の高度化

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8.4 計算機利用による運転・保守技術の高度化
8.4.1 総 論
 「ふげん」における運転・保守については、既存の技術を基に、重水・ヘリウム系統の運転・保守技術の確立などATR特有の手法を開発し、体系を築いてきた。特に、近年の計算機技術の進歩は著しく、計算機技術を利用することにより、プラントの信頼性の向上、合理的な運転・保守方法の実現、運転員や保守員の負担の軽減、炉心管理技術の高度化等を行うことが可能である。
 「ふげん」では、運転開始以来、計算機技術の積極的な導入を図り、商業用原子力発電所に先駆けて、CAD(Computer Aided Design)、 AI(Artificial Intelligence)、ファジー理論といった最新の技術にチャレンジし、それを取り入れることに成功してきた。これらの技術は、従来困難とされていた、運転員、保守員、炉心技術者のノウハウをシステム化することを可能とし、「ふげん」に蓄積された技術力を体系化することに大きな成果をあげてきた。

8.4.2 保守管理システム1)
(1)はじめに
 「ふげん」の保守管理システム(MMS:Maintenance Management System)は、保守管理業務の省力化、信頼性向上及びATR開発に有益なデータを蓄積・提供するために開発されたシステムである。このためMMSは、保守上の膨大なデータを管理し、各種統計処理により有益な情報を提供するシステムとなっている。このシステムによって、「ふげん」の信頼性向上と保守管理業務の省力化を図ることができた。
 「保守管理システム」は、昭和54(1979)年 4月より、保守業務に伴い大量に発生する保全データの蓄積及び予防保全への利用等を目的として開発に着手し、昭和55(1980)年11月より運用を開始した。本システムは、当初、大洗工学センターの計算機をリモートバッチ処理(RJE:Remote Job Entry)にて利用するものであった。これにより、保守にかかわる基本デ−タ(設備仕様、作業、故障、予備品等)の蓄積、保守にかかわる各種要求に応じた過去の作業・故障データの効率的な検索及び予備品在庫状況の迅速な把握が可能になり、これら保守管理データに基づく「ふげん」設備の信頼性向上対策等に有効に利用されてきた。
 その後、「ふげん」では、運転・保守業務をより
効率的・高精度に行うためのシステムの高度化の検討を進めた。5年間のMMS運用経験に基づき、サイトへの汎用計算機の導入、大容量記憶装置によるデータベースの構築、ワークステーションによる分散処理、バーコード・日本語処理端末の利用等最新のハードウエア並びにAI(Artificial Intelligence)、CAD(Computer Aided Design)、オンライン処理及び日本語処理等最新のソフトウエアの導入・利用により、昭和60(1985)年度からシステムの高度化を計画的に進めた。さらに、1998年度からは、保守管理システムをクライアント・サーバーシステムに移行した。システムの開発・移行においては、今までに作成したシステム及びデータベースを基礎として、データの共有化・システムのネットワーク化を図り、発電所の保守管理を中心とした業務を総合的に支援するシステムを目指してきた。また、運用経験を基に機能の充実、利用・操作性の向上、運用経費の削減等を図ってきた。
 本稿では、「ふげん」において開発・運用してきた「保守管理システム」の開発内容及び実績の概要について述べる。
システムの概要
 本システムでは、現在までに以下の項目が開発・運用されてきた。
)保修工事予算管理システム
)定検工事積算管理システム
)予備品管理システム
)定検工程管理支援システム
)設備台帳管理システム
)作業・故障管理システム
)アイソレーション管理支援システム
 これらの各システムは、図8.4.1に示すように計画・管理・報告・分析等の「ふげん」における保守業務全般にわたって利用されている。また、MMSの各機能の概要を以下に説明する。
)「保修工事予算管理システム」は、保修課内での予算管理及び長期の設備保全費用を把握、管理するものである。本システムの運用により、予算管理業務の合理化、予算管理精度の向上及び長期予算計画への反映等が可能となった。
)「定検工事積算管理システム」は、定期検査工事の発注に必要な人工数及び費用の積算を点検項目データの選択・修正により可能とし、処理の迅速化、業務の合理化を図っている。
)「予備品管理システム」は、「ふげん」の設



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