第8章 「ふげん」における運転・保守技術の高度化

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図8.3.36 ステンレス鋼材のき裂進展結果(炉外試験)

して、炉水模擬沸騰環境下における亜鉛注入の有無による比較試験を中心に実施した。
 SCC感受性は、低歪速度引張り試験(SSRT試験)を行い、粒界型SCC(IGSCC)の発生の有無で評価した。その結果、亜鉛注入の有無にかかわらずIGSCCの発生は、観察されず、IGSCCの感受性に及ぼす亜鉛注入の影響は、認められなかった。
 また、ステンレス鋼材のき裂進展性については、CT-PDM(電位差法)試験を実施した。ここでは、1つのCT試験片で水質条件を、BWR模擬水質環境下→水素注入環境下→水素注入+亜鉛注入環境下と、連続に変化させて、き裂長さを計測した。
 その結果、SUS304鋭敏化材においては、亜鉛注入の有無にかかわらず、き裂の進展は観察されず、IGSCCの進展感受性に及ぼす亜鉛注入の影響は、認められなかった。き裂長さの経時変化を図8.3.36に示す。
 以上の炉外試験結果により、放射能付着抑制効果の確認及び材料への影響がないことを確認し、亜鉛注入法が、「ふげん」に適用できる見通しが得られた6), 25)
(4)「ふげん」への亜鉛注入適用
亜鉛注入方法
 亜鉛注入の運転手法は、米国GE社により開発されたものであり、注入する亜鉛は、当初、天然の酸化亜鉛(ZnO)が使用されたが、天然亜鉛中の64Zn が放射化されて生成する放射性の65Znの線量寄与が
問題となっていた。このため、65Znの生成を抑制する方法として、注入する亜鉛中の同位体64Znを同位体分離によって除去した酸化亜鉛(DZO:Depleted Zinc Oxide)が使用されるようになった。
 「ふげん」における亜鉛注入方式は、DZOを用いた亜鉛粉末炭酸溶解方式を採用した。
 亜鉛注入装置は、亜鉛溶解槽2基、炭酸ガス注入ライン及び亜鉛溶解液注入ラインにより構成されている。溶解槽内に炭酸ガスが注入され、炭酸ガス飽和状態によりpHが6程度に維持され、亜鉛の溶解を促進している。亜鉛注入装置外観を写真8.3.5に示す。
 給水系の復水脱塩器出口から連続注入することに



写真8.3.5 亜鉛注入装置外観



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