第8章 「ふげん」における運転・保守技術の高度化

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図8.3.33 亜鉛イオン注入試験装置の系統概要

表8.3.17 ステンレス鋼材の炉外試験条件


ため、ATR特有材料である圧力管材料、ロールドジョイント部、燃料被覆管等の原子炉主要構成材料について、水素注入環境下での材料健全性確認試験として、以下の炉外試験を実施した。材料健全性確認試験の試験項目を表8.3.18に示す。
)燃料被覆管材の腐食挙動
 燃料被覆管材料については、高温高圧沸騰ループを用いて、試験片(Zircalloy-2)を試験槽に装着し、水素注入環境を共通条件にして、炉水模擬沸騰環境下における亜鉛注入の有無による比較腐食試験を実施した。燃料被覆管材の腐食挙動として問題となる水素吸収量のほか、被覆管内表面の酸化皮膜付着挙動を調査した。試験条件を表8.3.19に示す。
 その結果、図8.3.35に示すように、亜鉛注入による水素吸収量及び酸化皮膜の増加傾向は、認められなかった。また、酸化皮膜の付着状態は、亜鉛注入により安定な酸化皮膜が緻密に付着していることが


図8.3.34 亜鉛イオン注入の有無による
SUS316L材への60Co付着量変化

確認された。走査電子顕微鏡(SEM)による試験片表面の酸化皮膜観察結果を写真8.3.4に示す。
)ATR特有材料等の腐食特性
 ATR特有材料等については、大洗工学センターの(旧)安全工学部機器・構造安全工学室の高温高圧沸騰ループを改造し、炉水模擬沸騰環境下における亜鉛注入の有無による比較試験として、腐食特性の確認試験を実施した。その結果、原子炉構成材料の腐食量は、同等若しくは抑制される傾向が確認され、亜鉛注入による材料への影響はないことを確認した。
)ステンレス鋼材のSCC感受性
 ステンレス鋼材のSCC感受性については、高温高圧沸騰ループを用いて、水素注入環境を共通条件と



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