第8章 「ふげん」における運転・保守技術の高度化

帯

8



図8.2.20 超音波液体濃度計の構造と音速・濃度・湿度の関係図

きた。
光吸収を利用した定量法
 重水濃度の定量は、一般的に比重、赤外吸収、屈折率、超音波、融点、蒸気圧等の様々な方法が試みられている。その中において、現場における吸光度分析等の経験、質量分析のような特殊な技術は必要なく、機器の使用にも慣れているため、光吸収を利用する方法が、最適であると考えた。
 重水による光の吸収帯は、近赤外から赤外域にあり、いずれも定量分析に使用可能である。しかし、赤外域の吸光度は、非常に大きいため、厚さが数十ミクロンの極端に薄いセルの使用、または対照側へのシリコンウエハーの挿入を行い、見掛けの吸光度を制限して測定する必要があった。
 そこで、「ふげん」においては、可視域における分析でよく使用される5〜20ミリ厚のセルを用いて、近赤外域の吸光度により、重水の高濃度域における測定及び重水系樹脂交換作業時に必要である広範囲の重水濃度の簡便な測定方法を確立し、実用化した。
 なお、この定量方法は、運転初期から採用されて現在に至っている。
 この方法は、一定の時間間隔で重水をサンプリングし、吸光度を測定すことになり、測定結果を得るまでに時間を要して迅速に運転操作に反映できない。これが必要以上の劣化重水の発生の原因となり、またサンプリングと分析を長時間にわたって迅速に行わなければならないため、分析作業者の負担が大きいという問題があった。
超音波を利用した定量法
 上記の問題を解決するため、重水濃度と水温及び重水中を伝わる超音波の音速の相関関係を利用することを検討し、超音波濃度計を用いる連続重水濃度
測定法を考案した。超音波濃度計の構造並びに音速、濃度及び温度の関係を図8.2.20に示す。
 本測定法を重水系樹脂交換作業に採用することにより、従来、バッチ式で時間遅れの確認をしていた重水濃度変化をリアルタイムで確認できることとなり、運転操作への迅速な反映が可能となった。なお、本測定法で測定できる重水濃度は、数wt%のオーダーであり、精密な測定(0.001wt%)は、近赤外域の吸光度による測定法によっている。したがって、軽水化または重水化作業中における重水濃度の変化状況を把握する段階においては、超音波による濃度測定を採用し、一方、作業終了段階での精密な重水濃度測定は、吸光度による測定法を用いることとしている。また、超音波による連続濃度測定を採用したため、サンプリング分析を行う場合は、精密な濃度が要求される時点に限定され、長時間にわたるサンプリング分析作業はなくなり、分析作業の省力化が図られた。
(4)まとめ
 作業方法の改善や重水濃度測定方法の改良により、樹脂取扱技術を確立することができた。これは、樹脂交換に伴う樹脂の軽水化及び重水化操作により発生する劣化重水が、1回当たり約2.5m3(100%重水濃度換算)、樹脂移送に使用される重水も含めて使用される重水量が、1回当たり約3.0m3(100%重水濃度換算)となり、作業ごとの大きな変化はない。それは、樹脂交換作業に要する期間が約7日間であり、安定していることからも裏付けられる。

8.2.5 重水リサイクル技術の確立5),11)-14)

 


帯
309

前頁

目次

次頁