第7章 プルトニウム利用技術の確立及び実証

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 熱中性子は、主に減速材である重水中で十分に減速され、圧力管内の燃料集合体に供給されるため、プルトニウムの共鳴吸収の影響を比較的受けにくく、核分裂性プルトニウム(239Pu及び241Pu)と核分裂性ウラン(235U)の核的価値がほぼ等しくなる。このため、MOX燃料のプルトニウム同位体組成が異なっても、核分裂性プルトニウムと核分裂性ウランの和を一定にすれば、ウラン燃料とほぼ同一の燃焼度が得られる。
(2)MOX燃料装荷による制御棒価値の変化は、小さい
 炉心の反応度は、49本の制御棒と重水減速材中の液体ポイズン(10B)により制御している。制御棒は、主として外乱による反応度変化の制御に使用し、重水中の10B濃度調整は、燃焼による反応度低下の補償に使用する。制御棒は、熱中性子が多く存在する重水減速材中に挿入されるため、MOX燃料装荷による制御棒価値への影響は小さく、MOX燃料装荷割合が大きく変っても、制御棒価値は、ほとんど変化しない。
(3)冷却材ボイド係数は零近傍の値
 冷却材である軽水は、重水に比較して熱中性子吸収が大きいため、中性子有効利用の観点から燃料の冷却に必要な量に最適化されており、軽水の炉内での量が少ない。そのため、軽水による中性子を吸収する効果及び中性子を減速する効果ともに小さく、冷却材のボイド率変化による反応度変化は少ない。その結果、冷却材ボイド率は零近傍の値となる。
(4)出力分布の平坦化を図りやすい
 主に重水中の10B濃度調整により、炉心全体として一様に、各運転サイクルの余剰反応度を制御していること、冷却材ボイド係数が、零近傍の値であるため、冷却材ボイド率分布の出力分布への影響が少ないこと、減速材が、重水であるため、炉心における中性子移動面積が大きいことにより、出力分布の平坦化が図りやすくなっている。
(5)外乱に対する原子炉出力制御が容易
 冷却材ボイド係数が、零近傍の値であるため、タービン系の外乱による蒸気圧力の変化に対しても原子炉出力の変動は小さい。また、出力係数は、主に燃料体の温度係数に支配されており、その絶対値が比較的小さいため、出力変化時に必要な反応度補償が小さく、負荷変動時の原子炉出力制御が容易に行うことができる1)

7.3.2 プルトニウム利用に関する特性
(1)中性子吸収断面積
 図7.3.2に示すように、核分裂性プルトニウム(239Pu及び241Pu)の中性子エネルギー依存の核分裂断面積は、約0.3eV付近のエネルギー領域において大きなピークを有し、235Uの断面積の特性と大きく異なっている。また、240Puは、図7.3.3に示すよう、約1eV付近に大きな吸収断面積のピークがある。このように、ウランとプルトニウムにおいては、断面積の中性子エネルギー依存性が異なるため、一般に燃料組成が変化すると炉心特性も変化する。しかし


図7.3.2 Pu-239,Pu-241,U-235の核分裂断面積


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