第6章 「ふげん」の運転実績

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写真6.2.10 雑固体廃棄物焼却設備(焼却炉)

 雑固体廃棄物焼却設備の導入にあたっては、国内の先行プラントの同種設備の調査を行った。その結果、国内の原子力発電所における実績はないが、以下の特徴・利点を持つ、熱分解ガス化焼却炉を選定した。
熱分解方式は、廃棄物の剪断、脱水、カロリー調整等の前処理が不要である。
熱分解ガス化燃焼方式により、完全燃焼が期待でき、排ガス処理系の簡素化を図ることができる。
燃焼制御方式がシンプルである。また、燃焼温度が低いため、焼却灰の溶融が起こらず、定期点検時以外の炉内清掃が省略できる。
 また、雑固体廃棄物焼却設備の安定運転の確保及び機器保護のため、燃焼制御系、プラント負圧制御系、温度制御系、フィルタ差圧監視系等の制御系を設けた。
 熱分解ガス化燃焼方式焼却設備の燃焼制御は、熱分解ガスの発生量を制御することにより行う。熱分解ガス化燃焼方式においては、廃棄物を熱分解室で熱分解ガスに変換し、これを燃焼室で燃焼させるため、熱分解ガスの発生量と焼却炉出口排ガス温度は、ほぼ比例関係にある。また、熱分解ガスの発生量は、熱分解室への一次空気の供給量とほぼ比例するため、燃焼制御は、焼却炉出口排ガス温度に応じて、一次

空気供給量をカスケード制御することにより行う。
 また、万一、焼却炉出口排ガス温度が、一次空気による制御範囲を越えた場合は、還流ガス及び二次空気の供給流量を、排ガス温度に応じて増減するバックアップ制御系を備えており、この制御系の作動により、排ガス温度は、速やかに制御範囲に回復する。
(3)運転及び保守点検実績
 「ふげん」の雑固体廃棄物焼却設備は、通常勤務時間帯での運転を原則としており、夜間は焼却処理を停止して負圧維持を行っている。実際の廃棄物の焼却処理運転パターンを、温度記録の例で図6.2.26に示す。代表的な運転モードは、次のとおりである。
予熱運転
 焼却開始に先立ち、焼却炉を安定着火温度(焼却炉出口排ガス温度が 700℃以上)まで予熱昇温させる。
定常運転
廃棄物を焼却炉熱分解室に間欠投入することにより、廃棄物の安定した自燃維持を図る。
残燃運転
熱分解室内の廃棄物の熱分解ガス化が終了したのち、焼却炉下部の灰受けパドル上のカーボン分の完全燃焼を図る。
負圧維持運転
 焼却処理運転が終了したのち、焼却設備を排風機により負圧吸引することにより、灰受けパドル上のおき火の完全灰化、冷却及び焼却設備内のガスパージを行う。
 図6.2.26の温度記録が示すとおり、予熱運転に約 1.5h、残燃運転に約1hの実績を残しており、ほぼ設計条件を満足した。また、各部の温度についても、十分に設計値を満足した。
運転期間中の排ガス処理系の一次、二次フィルタ交換回数は、5年間(平成8〜13年)の平均で、一次フィルタが13回/年、二次フィルタが5回/年であった。高性能フィルタは、差圧上昇は見られなかったが、外観点検の状況から平成10年に交換した。一次・二次フィルタの主な故障原因と対策を以下に示す。
)揺動パドルの作動回数の過多及び低酸素濃度運転による不完全燃焼により、焼却灰の飛散による一次フィルタの閉塞が生じたため、パドル作動回数の低減及び空気供給量の調整を行う旨を運転マニュアルに記載した。
)低酸素濃度運転に伴う未燃分が、一次フィルタで燃焼したことによる一次フィルタの劣化、また高温時に、一次フィルタを逆洗したことによる一次


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