第6章 「ふげん」の運転実績

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(2)放射性液体廃棄物
 「ふげん」における液体廃棄物は、原子炉施設から放出するものと、重水精製施設から放出するものとに分けて管理してきた。液体廃棄物は、いずれもバッチごとに放射能濃度を確認し、放水槽経由で若狭湾側の放水口より放出を行ってきた。
 液体廃棄物の年度別放出実績を表6.1.28に示す。
 重水精製施設からのトリチウム以外の放出はなかった。
 原子炉施設からのγ核種(Co-60、Mn-54等)の放出放射能量は、図6.1.67に示すとおり、昭和56(1981)年度の約3×108Bqが最大であり、放出管理目標値(7.4×109Bq/年)を十分下廻るものであったが、達成可能なレベルまで充分低く抑えるため、数々の放出低減策を講じてきた。床ドレン・機器ドレン廃液は、昭和57(1982)年度以降、それまでのフィルタ・脱塩処理から、蒸発濃縮処理に変更することにより、放出量は大幅に減少した。昭和57年度以降、ほとんどの放出量を占めるようになった洗濯廃液は、洗濯廃液処理装置(沈降分離処理)の開発、ドライクリーニング装置の増強等により、放出放射能量の低減化を図ってきた。さらに、平成6(1994)年度に、管理区域用つなぎ服の全量ドライクリーニング処理及び管理区域用靴下の使い捨て運用等の実
施により洗濯廃液からのγ核種放出量「ゼロ」を達成し、以後、今日まで放出量「ゼロ」を維持してきた。また、将来的に、ドライクリーニングに使用しているフロンが全廃となるため、洗濯方法を水洗方式に変更する必要があり、この際、放出放射能を低減するために必要となる水洗排水フィルタの導入検討を進めている。
 原子炉施設からの液体トリチウムの放出量は、図6.1.68に示すとおり、気体トリチウムと同様、重水中のトリチウム濃度の上昇に伴い年々増加する傾向にあり、また昭和63(1988)年度以降、非常用ガス処理系により気体トリチウムを液体トリチウムとして回収し、放出しているため、放出量が増加している。運転開始後数年以降の放出量は、放出管理目標値(1.1×1013Bq/年)の約30〜50%に相当する約3〜5×1012Bq/年で推移している。液体トリチウムの大部分は、定期検査作業に起因し放出されるもので、その内訳は、重水系点検作業及びそのウエス乾燥作業に伴い発生した非常用ガス処理系のドレン水、次いで重水系樹脂交換時の樹脂の軽水化により発生した廃液がほとんどを占める。
 原子炉施設からの液体トリチウムの放出源は、非常用ガス処理系が約7割を占めており、高濃度重水を直接回収する装置の開発を検討中である。


図6.1.67 液体γ核種の年度別放出実績(原子炉施設)


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