第6章 「ふげん」の運転実績

帯

6


6.1.3 保守管理1),2)
(1)概要3)
 「ふげん」における保守管理は、日常点検、定期検査及び設備の改善により、故障発生の未然防止を図るという予防保全を基本とし、プラントの安全運転及び信頼性の維持・向上を目的として実施してきた。
 「ふげん」は、自主技術開発による国産の重水炉であるため、設計段階での研究開発から建設、起動試験及びその後の運転を通して得られた多くの知見とデータを自らが保有しており、これが、保守管理面における大きなメリットとなっている。特に、ATR特有機器である圧力管集合体、シールプラグ、燃料交換装置、国産化した原子炉再循環ポンプ、主蒸気隔離弁等の重要機器の設計・製作段階における開発実証試験を行い、機能及び性能を確認した。大洗工学センター等において、これら重要機器の耐久試験を行い、これらの結果を実機設備の設計・製作に反映している。
 「ふげん」においては、これまでの運転と第1回から17回までの定期検査の結果において、重水炉固有の設計などの本質面に起因したトラブルの発生はなく、各設備・機器の性能及び信頼性を実証した。また、予防保全を基本とした適切な保守管理として、ATR特有設備の分解点検手法、圧力管、入口管、上昇管の供用期間中検査の手法等を確立した。ただし、いくつかのプラントの計画外停止を含むトラブルを経験しており、その都度、要因分析に基づき設備・機器の構造、材料、運転状態、使用環境、設計・施工記録等を確認し、原因を検討・評価するとともに、類似個所を含めた適切な対策を実施し、再発防止に万全を期してきた。
 また、「ふげん」の保守管理体制について、運転開始当初は、各電力会社の発電所で一般的とされる専門技術別体制(機械、電気、計装のグループ分け)としていたが、効率的な保守及び柔軟な人員配置を可能とするため、昭和58(1983)年8月からは、設備別体制(担当する設備ごとのグループ分け)に変更し、各個人が、機械、電気、計装のすべての業務が実施できるような体制に変更した。
(2)保守計画
 「ふげん」においては、予防保全を基本として、プラントを構成する設備・機器ごとに、その機能及び健全性を維持するとともに、適切な改善を図っていくため、
安全上の重要度
使用条件
 (温度、圧力、流体条件、設置環境等)
運転時間(連続使用、待機等)
技術基準(保安規定、JEAC等)
点検保守実績
などを考慮して、定期点検内容、点検周期を定め、長期的な視野から計画的に点検を実施している。また、点検周期の見直し及び改善については、故障発生実績、設備・機器の構成部品の経年変化状況、運転・保守実績、他プラントにおける事故・故障等の経験を十分検討し、点検計画に反映してきた。
 具体的には、「長期定期検査計画書」、「3か年運転計画」等の長期的な計画を策定した。これに沿って設備・機器の日常点検、定期点検等の点検計画、経年変化対策等のための改良・取替計画、ATRの実用化等に向けた技術開発計画並びに予算計画等を含めた計画を策定し、保守業務を計画的に遂行することにより、プラントの信頼性の維持・向上を図ってきた。
(3)日常点検
 日常点検においては、運転員及び保修課員の巡視点検等により、大きな故障に至る前に不具合個所を発見し、補修及び予防保全措置等の対応を行い、プラントの安全・安定な運転を継続してきた。なお、運転開始当初から、それらの日常的な巡視点検等で不具合箇所を発見し、補修措置等を完了するまでの保守管理の手順を所内規則として定め、また計算機を利用した作業・故障管理システムを導入し、円滑な保守運営を実施してきた。
 また、プラントの運転サイクルに併せて、プラントデータ処理システムにより、各設備・機器の運転状態量の微小変動を長期的に監視・評価する検討会(LTT検討会:Long Term Trend検討会)を開催し、兆候ベースにおける異常の早期発見及び予防保全計画への反映等に役立ててきた。特に、昭和57(1982)年のLTT検討会において、主給水流量調節弁の開度が徐々に低下する現象を確認したため、キャビテーションによる侵食が生じにくい構造に当該調節弁の型式を変更し、運転上の支障が発生する前に、予防保全対策を実施した事例が上げられる。
(4)定期検査
 「ふげん」の定期検査は、「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」(以下、「原子炉等規制法」という)に基いて毎年実施してきた。


帯
89

前頁

目次

次頁