第6章 「ふげん」の運転実績

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昭和61(1986)年度以降の設備利用率は、比較的高く、順調に運転を継続している。
特に、平成7(1995)年度においては、定期検査のための停止期間が少なく、また事故・故障等の発生がなかったため、年度設備利用率は、過去最高の86.2%となった。
平成9(1997)年度の設備利用率は、低くなっている。これは、重水精製装置からの重水の微量漏えいに関する関係部署への通報連絡の遅れにより、大臣から停止命令を受け、プラントを停止して通報連絡体制等の改善対策の検討を実施したこと(停止期間:約1.5か月)、第14回定期検査において、中性子検出器の先端部が脱落していることを発見し、当該検出器をはじめ、類似の検出器についても取替えることとしたため、定期検査工程を約1か月延長したことなどにより、プラント停止期間が長くなったためである。
平成11(1999)年度の設備利用率は、低くくなっている。これは、第15回定期検査において、長期定期検査計画に基づきBループ原子炉再循環ポンプの分解点検及び系統化学除染を行ったため、予定期間が計画段階から長かったこと(131日)、B原子炉再循環ポンプの試運転中にポンプに不具合が発生したこと及び重水精製装置(RI施設)からの重水漏えい関する原因調査及び対策実施のために76日要したことによるものである。また、平成11(1999)年10月に、シールプラグの機能低下により約1か月プラントを停止したことも要因となっている。
平成12(2000)年度については、平成11年度計画停止後の原子炉起動時、制御棒位置指示計の不良に関する原因調査及び対策の実施のために25日を要したこと、第15回定期検査と同様に、Aループ原子炉再循環ポンプの分解点検及び系統化学除染を行ったため、予定期間が計画段階から長かった(154日)ため、設備利用率が低くなった。
平成13(2001)年度については、平成13年5月に、ヘリウム系配管からのヘリウム漏えいが生じたため、計画停止開始を約20日早めて実施したこと、ヘリウム漏えいの原因調査と対策検討に長期間(約7.5か月)を要したこと及び継続して第17回定期検査を実施したため、これまでで最も低い設備利用率(14.5%)となった。

 以上、本格運転開始当初はSCC対策として原子炉冷却系配管の取替えなどの改造工事を実施したこと
や事故・故障等により設備利用率が低い値を示した。また、平成9(1997)年度以降については、原子炉再循環ポンプの分解点検、圧力管モニタリング等のために計画段階から定期検査期間が長かったこと、トラブルなどにより定期検査終了が延長となったことから設備利用率が低くなっている。しかし、「ふげん」の標準的な定期検査日数は、ほぼ90日間であり、「ふげん」が運転を開始した当初の目標であった「軽水炉並の約90日間の定期検査工程の実証」を行うことができた。
 このように、計画的な設備改善の実施、運転管理の充実等を行うことにより、運転期間中の平均設備利用率は、約62%であった。これは、「ふげん」と同時期に運転を開始した国内の実用プラントと比較しても遜色のない値となっており、「ふげん」は、実用炉と同等の信頼性を有しているということができる。
(2)事故・故障等の推移
 本格運転開始以降、平成15(2003)年3月まで、経験した事故・故障等の内容を表6.1.1、報告件数の推移を図6.1.4(1/2)、(2/2)及び図6.1.5に示す。原子炉等規制法または電気事業法に基づく報告件数は、32件、科学技術庁長官通達等または通商産業省資源エネルギー庁長官通達に基づく軽微な事故報告件数は、24件であり、累計は、56件であった。
計画外停止回数の年度推移を図6.1.6及び図6.1.7に示す。本格運転開始から平成15(2003)年3月末までの累計は、28回であった。
 なお、いずれの事故・故障等においても、原子力発電所の周辺環境への放射能の影響はなかった。
 本格運転開始以降の事故・故障等の推移は、以下のとおりである。
法律に基づく事故・故障等の報告件数を図6.1.4(1/2)及び図6.1.5に示す。昭和54(1979)年の運転開始以降、昭和63(1988)年までの10年間の報告件数は、16件であり、年度平均は、1.6件であったが、平成元年度以降は、年度平均約1件となっている。
 昭和63(1988)年までの10年間の主なトラブルは、昭和50年代初期にBWRプラントでも経験したステンレス配管の応力腐食割れ(原子炉冷却材圧力バウンダリ配管)、クラッドに起因した燃料交換装置の故障、計測制御系統設備の故障による原子炉自動停止であった。これらについては、再発防止の観点から計画的に原子炉冷却材圧力バウンダリ配管材料を


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