第6章 「ふげん」の運転実績

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図6.1.1 運転履歴5

 また、「(2)事故・故障等の推移」において、年度ごとの事故・故障等の報告件数及び計画外停止回数の推移を調査し、適切な対策がなされ事故・故障等が減少してきているかを評価した。
(1)発電実績の推移
 発電電力量及び設備利用率の年度推移並びに定期検査日数の推移を図6.1.2、図6.1.3に示す。総発電電力量は、約219億2,400万kWh、総発電時間は、約13万7,000時間、平均設備利用率は、約62%、平均定期検査日数は、約113日(計画日数)である。
 設備利用率の年度推移及び定期検査日数の推移の概要は、以下のとおりである。
「ふげん」は、年間の運転パターンとして、毎年実施する定期検査のほか、定期検査と定期検査の間

に、燃料サイクルコスト低減の観点から燃料交換のための中間停止(期間:約1か月)を行うことを基本としている。このため、設備利用率は、中間停止を行わない場合に比べて低くなる。
昭和55(1980)年度から昭和56(1981)年度にかけて設備利用率が低いのは、昭和55年11月に、余熱除去系のステンレス配管に応力腐食割れ(SCC)が発見され、この対策のため、昭和56年10月まで約1年間にわたり、運転を停止していたことによる。
これ以降も、昭和60(1985)年度まで、事故・故障等のために運転停止回数が多く、また後述するSCC対策や重要機器の初回点検等のため、定期検査日数は、平均日数を超える期間を要していた。これらのことから、運転開始から昭和60(1985)年までの7年間の設備利用率は、昭和58(1983)年度から59(1984)年度を除いて低い値となっている。
昭和58年度から59年度にかけて、設備利用率は、高くなっている。これは、事故・故障等の発生が少なく、かつ復旧までの停止日数が短期間であったこと、定期検査の実施時期が2年度にわたったこと、さらに昭和59(1984)年7月から昭和60(1985)年7月まで、ATRの運転信頼性を実証するための12か月連続運転を実施したことによるものである。
「ふげん」におけるSCC対策は、
)SUS304系材料から耐SCC性に優れているSUS316系材料への取り替え
)溶接部の高周波加熱により残留引張応力を低減させる「高周波加熱による残留応力改善処理(IHSI)」の実施
)供用期間中検査(ISI)の強化
)水素注入による水質改善
を基本として計画的に対策を実施した。
 このうち、原子炉冷却材バウンダリの材料取り替えは、第2回定期検査の昭和56(1981)年度から第9回定期検査の平成3(1991)年度までの約12年にわたって計画的に実施した。
昭和60(1985)年度の設備利用率は、低くなっている。これは、原子炉再循環系Aループの当初計画においては、この年度にIHSIを施工する計画であったが、調査・検討の結果、原子炉格納容器内の機器配置から材料の取替えが可能との結論を得たため、第5回定期検査において当該ループの材料取替えを行ったこと、重水系機器の内部点検を重点的に実施したこと、事故・故障等が多く発生したため、定期検査日数が172日と長かったことによるものである。


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