第4章 「ふげん」機器の試作開発

帯

4


4.2.2 燃料交換装置の開発
 上記の経緯から、「ふげん」の燃料交換装置は、原子炉運転中に原子炉下方から燃料交換可能とする装置として設計され、他に例のない特徴を持ったものとなっている。燃料交換装置は、遠隔自動により原子炉運転中に安全かつ確実に燃料交換を行う必要があり、高い信頼性が要求された。このため、燃料交換装置の開発は、昭和42(1967)年〜50(1975)年の間に、概念・基本設計→機能・性能上重要な主要部品の試作開発試験→実規模モックアップ試験の段階を踏んで進めた。実機の燃料交換装置は、これらの結果を反映させて改良・製作し、昭和50年11月〜53年3月に現地据付・試運転を行い、昭和53年3月15日〜5月1日の燃料初装荷に使用された。燃料交換装置の全体図と構造図を図4.2.2と図4.2.3に示す。
(1)主要部品の試作開発
 燃料交換装置の機能を左右する主要部品として、圧力管と結合するためのスナウト、燃料を掴んで昇降させるグラブ及びグラブホース及び圧力容器内回転機器の水中軸受等について、その機能・耐久性を確認する試作・試験を行った。
スナウト
 スナウト(Snout:鼻先またはパイプ先端の意味)は、燃料交換機の上端に設置されて圧力管と結合するもので、確実・容易に脱着できるが、約80気圧の水圧に耐え、かつ地震時等で燃料交換機と圧力管の相対変位が約10mm生じても結合が外れず、更に圧力管に過大な荷重が加わらないような柔構造にする必要があり、設計的に相反する機能が要求された。
 このため、スナウトの構造は、3重円筒構造とし、2重系統の油圧シリンダーで伸縮し、かつ電源喪失等で油圧が低下してもスプリング力で圧力管から外れない構造とした。本部品は、グラブとともに燃料交換装置の基本構造を決定する上で最も重要な部品であり、最初に試作試験に着手し、結合機能、気密・耐圧機能等を確認した。
グラブ及びグラブホース
 グラブは、燃料交換装置圧力容器内(水中)にあって、圧力管内の燃料集合体を掴んで出し入れする機能と圧力管下端部にあるシールプラグを着脱する機能を持つ。グラブの掴み機構は、水中で使用するために水圧ピストンで駆動する方式とし、グラブには、駆動水を供給する2本の水圧ホースとピストン位置を検出する2本の水圧ホースが接続されている。

これらのホースは、交換装置下部にあるホース巻取り装置でグラブの昇降に合わせて巻き取られる。
 この水圧駆動式グラブとグラブホースの試作試験を行い、ホースについては、数種類の金属製フレキシブルホースを試作して繰返し曲げ・耐圧試験等を行い、実機使用に耐え得ることを確認した。
水中軸受
 燃料交換装置圧力容器内の回転機器の軸受は、ボールベアリング軸受が使用されている。この軸受は、潤滑材が使えない水中で使用することから、その耐久性を確認する試験を行った。試験では、燃料等に付着して交換装置内に入ってくるクラッドを模擬した試験を行い、シール付き軸受を実機に採用した。しかし、後の使用実績で述べるように、実際の使用において多量のクラッドが交換機内に入り、軸受内にも侵入して回転し難くなるトラブルが生じた。このため、実機では更に各軸受内に清浄水を注水する配管を取付け、クラッドが侵入しない対策を施した。
(2)燃料交換装置試作試験
燃料交換装置の試作
 上記の主要部品試作開発の結果を踏まえて、実規模の燃料交換装置を試作し、また実機と同等の使用条件で燃料交換試験ができる試験装置(運転中燃料交換を模擬した72kg/cm2、277℃の高温高圧ループ)を製作した。燃料交換装置と燃料集合体+遮蔽プラグを合わせた長さは約23mになり、試験装置は25mを超える高さになるため、メーカ工場建屋を増設して設置した。写真4.2.1に燃料交換装置試作機及び試験装置を示す。
燃料交換試験
 燃料交換装置の試験は、第1次〜第3次試験まで運転中燃料交換を含めた各種試験を昭和48(1973)年〜50(1975)年に実施した。
 第1次試験では、まず常温水中での燃料交換機各部の作動試験、台車位置決め試験等による機能確認を行ったあと、常温・大気圧(炉停止状態)での燃料交換試験を行った。試験に使用した模擬燃料は、実機燃料と同じ寸法で、ペレットは、ウランペレットの重量に合わせたタングステン−銅合金ペレットを使用した。
 次に、第2次試験として、原子炉運転中燃料交換を模擬した試験を行った。試験ループの温度を150℃に上げて燃料交換試験を行ったところ、燃料集合体タイプレート案内バネが圧力管内で“かじり”



帯
40

前頁

目次

次頁