第3章 「ふげん」の設計

帯

3


われた。
 「ふげん」の主要プラント要目を表3.4.2〜表3.4.5に、原子炉断面図を図3.4.1に、また圧力管−カランドリア管構成図を図3.4.2に示した。第2次概念設計と比較して変更した点は、次のとおりである。
(1)96体のMOX燃料を初期炉心の中央部に装荷し、冷却材ボイド反応度を0ないし負にした。
(2)これによって、原子炉冷却系を4ループから2ループにした。
(3)原子炉冷却材流量を9,700t/hから7,600t/hに変更した。
(4)ブースタ棒を廃止し、制御棒を49本にした。
(5)炉心防振板を1板にした。
(6)3,600rpm蒸気タービンを採用することとした。
 一方、昭和47(1972)年半ばに、次のことが判明した。
 大洗工学センターの大型熱ループ(HTL)で最終設計の燃料集合体のバーンアウト限界を測定したところ、予備試験の値より約15%低下していた。
 冷却材ボイド反応度を負側に評価していた。
 これらを解決するため、核・熱・水力設計と構造設計から検討を加え、またHTLでは、スペーサ間隔、燃料棒間隙などのバーンアウト限界に及ぼす影響について精力的に実験を行った。
 上記バーンアウト限界低下原因は、燃料集合体が圧力管によりかかって収められるので、よりかかった側の流路が狭くなるためであることが分かった。
 燃料集合体のスペーサ間隔を詰めると、バーンアウト限界は高くなる。このときスペーサは流動抵抗になるため、熱負荷の高い燃料中心部のスペーサ間隔を42cmから26cmにし、燃料両端部の間隔を広くして全体としての流動抵抗の増加を少なくし、炉心熱除去の問題を解決することとした。
 また、MOX燃料集合体の外層燃料棒と内層及び中間層における燃料棒の各プルトニウム富化度を、0.55%、0.8%、0.8%として局所ピーキング係数を下げた。この結果、冷却材ボイド反応度が若干正側に移行したため、カランドリア管を太くしてVm/Vfを小さくし、冷却材ボイド反応度を下げた。
 昭和49(1974)年頃、“軽水炉に関する非常用炉心冷却系の安全評価指針”が、アメリカ及び日本で同時にまとめられつつあった。この指針は翌50年5月13日に告示されたが、「ふげん」の非常用炉心冷却系及びこれに関連する安全評価の解析は、この指針に沿って行った。

 また、実物大試験は、大洗工学センターの施設を用いて実施し、その安全性を確認・実証した。

3.5 プラント概要
 「ふげん」の炉心には、MOX燃料と濃縮ウラン燃料が装荷可能で、いずれの燃料もほぼ等価に利用できる。「ふげん」は、冷却材ボイド係数がほぼゼロに設計されているので、炉雑音は非常に小さく、原子炉は極めて安定している。

3.5.1 「ふげん」の安全性
 「ふげん」の燃料は、圧力管に収められ燃料チャンネルを構成しており、燃料チャンネルを含めた原子炉本体は、鉄水遮蔽体等で囲まれ、原子炉冷却系など重要機器とともに厚さ22〜30mmの鋼板で気密性が保たれた原子炉格納容器内に据付けられている。さらにこの格納容器の周りにコンクリート遮蔽壁を設け、格納容器との間を負圧にして格納容器内の気体が直接外気に出ない二重構造にしている。
 原子炉を直ちに停止しなければならないときは、原子炉保護系が動作して、49本の制御棒を2秒以内に炉心内に落下させるが、この動作は、重力を利用するだけの構造なので非常に確実である。また、原子炉停止のバックアップとして炉心部から減速材の重水を抜く重水ダンプ装置を有しているが、これも重水ダンプ室と炉心重水表面の空間を連絡し両者を均圧にするだけで達成できる。
 各機器は、十分安全に設計・製作され、厳重な検査を経て据付けられている。さらに、運転に入る前に系統試験、起動試験など各種試験を十分行って、安全と性能の確認を行っている。原子炉が運転されてからは、毎日の巡視・点検が行われるとともに、少なくとも年1回原子炉を停止して十分な検査が実施される。また、運転もあらかじめ定められた操作手順に従って行われ、操作手順は運転に入る前に十分に検討された安全なものとなっている。このように安全を確保するために十分に対応しているが、もし、仮に原子炉冷却系が破損したとしても3種類の非常用炉心冷却設備が自動的に作動して燃料を安全に冷却するようになっている。これら非常用炉心冷却系に関しては、大洗で実規模の安全性試験を行い、安全性を確認してそのデータを基に「ふげん」は設計されている。非常用の電源としてはディーゼル発電機を備え、停電時にはすぐディーゼル発電機が起動し、原子炉を安全に停止・冷却させる機構になっ



帯
18

前頁

目次

次頁