用を軽水炉が代替し得る見通しが得られたことが実証炉計画中止の原因となりました。この意味において、ATRは原子力長計がいう軽水炉から高速増殖炉への補完炉としての役割を果たしたともいえますが、ここには開発に長い年月と多額の費用を要する大型プロジェクトを推進する開発体制における課題が伺えます。
  「ふげん」プロジェクトにおいては、ユーザー(運転主体)と技術開発主体が同一であり、設計から建設、運転まで一貫した開発体制のもと、技術支援も受けやすく技術的課題やユーザーニーズにも即応できる体制が構築でき、統一的な目標の下にプロジェクト推進が可能でした。他方、実証炉計画においては原子力長計の中で、エンドユーザーとしての電気事業者、開発建設主体の電源開発、技術支援を行うサイクル機構やメーカーと三者の立場と役割が明確にされました。しかしながら、その後の原子力を取り巻く国内外のエネルギー需給や社会環境の変化に、三者間で統一的な対応が取れなかったことが、計画の推進に大きく影響したものと思われます。
  「ふげん」の運転終了後も、核燃料サイクルを確立してプルトニウムを利用するというわが国の原子力利用の基本的な考え方は変わることはありません。ウラン資源も化石燃料資源と同様100年に満たない埋蔵量しかありません。プルトニウムの利用がエネルギー確保の単なる一選択肢ではなく、セキュリティ確保の柱であるとの信念を思い起こせば、原子力黎明期の先達が原子力の自主開発路線を掲げた先見性が改めて評価されます。
  ATR開発あるいは「ふげん」の開発、運転において培われた技術や育成された人材は、今後、軽水炉におけるプルサーマルそして高速増殖炉での利用へと引き継がれ、有効に活かされ役立てられていくと確信します。


第17回定期検査安全大会



運転期間中最後の健康診断、第17回定期検査時の安全大会の模様です。「ふげん」の職員、常駐協力会社そして点検を担当するメーカの方々全員が集い、定期検査における安全作業への誓いを立てました。安全・安定運転を支える地道な活動の積み重ねの上に大きな成果が実っています。