プラント運転管理技術の開発成果(4)
水化学管理技術の開発
原子炉冷却材に軽水を使用するプラントでは、ステンレス鋼の応力腐食割れ(SCC)の防止や保守点検作業時の被ばく低減など、プラントの安全性・信頼性を確保する観点から冷却材の水質管理が大変重要になっています。同じ型式の原子力発電所でも使
用している材料や運転履歴が異なるため、プラント毎に最適な管理方法を確立する必要があります。「ふげん」においても、冷却材の水質管理技術の改善に力を注ぎ、世界でも有数の成果をあげ軽水炉における対策にも反映されています。
(1) 水素注入技術
水素注入法は、冷却材中に水素を注入してSCCを発生させる水質環境因子である溶存酸素を低減させ、水質環境を改善することによってSCCの発生を防止するものです。「ふげん」の水素注入は国内で
は初めての試みであったため、詳細な調査や綿密な材料試験、短期注入試験を実施し、十分にその効果やプラントへの影響を確認した後、昭和60年12月から連続注入を行いました。ステンレス鋼の腐食電位
を「ふげん」内に設置したインプラント試験装置を用いて測定したり、また、水素注入に伴う冷却材中のCo-60濃度の変化挙動を追跡して評価するなど、得られたデータは国際的にも高い評価を得ています。
SUS304ステンレス鋼に発生した応力腐食割れ
厳しい試験条件下で強制的に発生させた粒界型応力腐食割れ(IGSCC)の表面を撮影したものです。