令和8年3月19日
国立研究開発法人日本原子力研究開発機構

外付けタンクに電気を貯める「レドックスフロー蓄電池」を開発!
―ウラン蓄電池のフロー化で、劣化ウランを資源化する大容量蓄電技術に光―

【発表のポイント】

【概要】

劣化ウランは原子力発電の燃料を製造する上での副産物です。現在の原子炉(軽水炉)では燃料として利用できず、国内に約16,000トンが未利用のまま保管されています。劣化ウランに新しい資源価値を生み出すため、研究チームは、充電と放電の役割を担う材料(活物質)にウランを用いる大容量蓄電技術の開発に取り組んでいます。

本開発では、ウランと鉄を活物質に利用した「レドックスフロー蓄電池」を世界で初めて開発しました。レドックスフロー蓄電池では、活物質が溶けた液(電解液)を貯めるタンクが、充放電を起こす電極部と分離しています。充電した電解液をポンプで循環(フロー)させることで、電気を外付けのタンクに貯めることができます。タンクを大きくすることで蓄電容量(電気を貯められる量)を増やすことができることから、大容量の蓄電に相性の良いシステムとされています。

研究チームでは、ウラン蓄電池の電解液をフロー化するために、電解液の組成の再検討などに取り組み、電極部とタンクを分離しても充放電できるようになりました。試作したレドックスフロー蓄電池は、電極部とタンクが一体化したウラン蓄電池と比べ、より長い時間にわたって安定して電流を取り出せることを確認しました。

ウランを活物質に用いたレドックスフロー蓄電池の大容量化・社会実装によって、日本国内で大量に保有する劣化ウランに新たな資源価値を与えられます。さらに、メガソーラーや洋上風力など出力が変動する再生可能エネルギーの導入拡大にあたって、電力供給網の調整機能を果たすことで、脱炭素社会の実現への貢献が期待できます。

本研究は、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(JAEA、理事長 小口正範)原子力科学研究所 NXR開発センター 大容量蓄電池開発特別チームの植野雄大研究員、大内和希研究副主幹、濵野凌研究員、渡邉雅之上級研究主席により、原子力基礎工学研究センターの協力の下で得られた成果です。

本研究を基に、令和6年11月に特許庁へ出願した特許出願案(特願2024-209096)について、国内優先権主張出願制度を活用し、令和7年11月25日に特許出願を行いました(特願2025-202752 “二次電池とその製造方法”)。

【これまでの背景・経緯】

劣化ウランは、原子力発電の燃料製造で副産物として生じます。核分裂を起こしやすいウラン[1]が十分に含まれていないため、現在の原子炉(軽水炉)では燃料として利用することができません。次世代の原子炉で燃料としての利用が見込まれていますが、現状は日本国内では使い道がなく、およそ16,000トンを保管しています(1)。また、世界全体で保有している劣化ウランの総量は約160万トンとされています(2)

研究チームは、劣化ウランの資源化を目指して、充電と放電の役割を担う材料(活物質)にウランを利用した大容量蓄電技術の開発に注力しています(3)(4)。2025年には、ウランと鉄を活物質に用いた「ウラン蓄電池」を構築し、充電と放電の性能を世界で初めて明らかにしました(5)

蓄電技術は、太陽光や風力など出力が変動する再生可能エネルギーの導入拡大にあたって、電力供給網を安定に維持するために重要です。大規模な発電プラントの導入などを伴う再生可能エネルギーの主力電源化にあたり、政府は、第7次エネルギー基本計画(6)において、大型蓄電システム(系統用蓄電池)を調整電源の一つに位置付けています。このような背景から、研究チームは、大規模な再生可能エネルギー発電への対応を目指し、ウラン蓄電池の大容量化に関する開発を進めてきました。

【今回の成果】

本研究では、ウラン蓄電池をベースにした「レドックスフロー蓄電池」を開発しました。負極にウラン、正極に鉄を活物質として採用したレドックスフロー蓄電池の開発は世界で初めてです。

レドックスフロー蓄電池では、電解液を貯める場所(タンク)が、充放電を起こす場所(電極部)と分離しています(図1)。電解液はポンプによってタンクと電極部の間を循環しており、充電した電解液を外付けしたタンクに貯めることで蓄電ができる仕組みになっています。電極部は蓄電池が発揮できる力(出力)に、タンクは蓄電池が貯められる電気量(容量)に関わります。したがって、レドックスフロー蓄電池ではタンクと電極部それぞれの数や大きさを変えることで、蓄電容量や出力を増やすことができます。このことから、蓄電池の大容量化と相性が良いとされています。

図 1 タンクと電極部が一体となった蓄電池(左)と、タンクと電極部が分離した蓄電池(レドックスフロー蓄電池)(右)の充放電の仕組み

ウラン蓄電池は、負極の電解液にウランイオン、正極の電解液に鉄イオンを用います。充電時には、ウランイオンは4価(液色:緑色)から3価(液色:濃紫色)へ変わり、放電時には逆反応が起こります。本開発では、ウラン蓄電池の大容量化を見据えて、蓄電池としての機能を維持しながらフロー化に適するように電解液の構成材料を再検討しました。

今回試作したレドックスフロー蓄電池では、充電前、ウランを含む負極側タンクの電解液は緑色で、ウランイオンが4価として存在していることを示しています。負極・正極タンクからポンプで電解液を循環しながら充電すると、セルの出口側で負極電解液は濃い紫色に変化しました。これは、充電反応によって、ウランイオンが3価に変化したためです。充電を続けると、タンク内の電解液も徐々に濃い紫色へと変化する様子が見られました(図2)。また、充電後の電解液をセルに送り込みながらLEDをつなぐと、放電反応によりLEDへ電気が供給され、点灯する様子が確認できました。さらに、タンクと電極部が一体となったウラン蓄電池と比較すると、より長い時間にわたり電気を取り出せることも確認できました(図3)。

図 2 今回試作したレドックスフロー蓄電池の充電試験

電極部に入った緑色の負極電解液は、充電反応によって濃い紫色に変わり排出された。電解液はタンクと電極部の間をポンプで循環するので、負極側タンクの電解液の色も同様に変化している

図 3 今回試作したレドックスフロー蓄電池の放電曲線(赤色)

電極部にタンクが一体化されたウラン蓄電池の放電曲線(灰色)(3)(5) と比べて、放電時間の増加を確認できた

以上の実験結果から、レドックスフロー蓄電池においてウランを活物質として利用できることを確認できたことになります。本開発を基に、令和6年11月に特許庁へ出願した特許出願案(特願2024-209096)について、国内優先権主張出願制度を活用し、令和7年11月25日に特許出願を行いました(特願2025-202752 “二次電池とその製造方法”)。

【今後の展望】

今後は、ウランを活物質に用いたレドックスフロー蓄電池のサイクル特性を評価するとともに、タンクや電極部を大きくすることで、蓄電池の容量や出力の向上を目指します。具体的には、レドックスフロー蓄電池を構成する電解液、電極部に用いる隔膜や電極の最適な材料は何か、大出力化・大容量化にあたって最適な循環の条件は何か、といった検討を進めます。

国内に保有する劣化ウランをレドックスフロー蓄電池の材料として活用できれば、メガソーラーや洋上風力が導入された電力供給網の調整機能などの役割を通じて、劣化ウランに新たな資源価値が生まれます。原子力と再生可能エネルギーの相乗効果で脱炭素社会の実現にも貢献することが期待できます。

【研究開発実施施設】

日本原子力研究開発機構 原子力科学研究所 第4研究棟

【参考文献】

(1) “我が国における令和6年(2024年)の保障措置活動の実施結果”, 原子力規制委員会, https://www.nra.go.jp/data/000476661.pdf (2025).

(2) “Uranium and Depleted Uranium”, World Nuclear Association, https://world-nuclear.org/information-library/nuclear-fuel-cycle/uranium-resources/uranium-and-depleted-uranium (accessed 2026-01-15).

(3) “The rechargeable battery using uranium as an active material”, Kazuki Ouchi, Katsuhiro Ueno, and Masayuki Watanabe, Scientific Reports, 15, 18515 (2025).

(4) “A fundamental study on clarifying the potential performance of a new rechargeable battery using uranium as an active material”, Katsuhiro Ueno, Kazuki Ouchi, and Masayuki Watanabe, Results in Engineering, 29, 109246 (2026).

(5) “世界初! ウランを用いた蓄電池を開発 ―劣化ウランの資源化で再生可能エネルギーとの相乗効果を最大限に発揮―”, 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, https://www.jaea.go.jp/02/press2024/p25031301/ (令和7年3月13日)

(6) “第7次エネルギー基本計画”, 経済産業省, https://www.meti.go.jp/press/2024/02/20250218001/20250218001-1.pdf (2025).

【用語の説明】

[1]核分裂を起こしやすいウラン

ウラン235のこと。ウランには、質量数(原子の中の陽子と中性子の数の和)が異なるウランが存在し、ウラン235は質量数が235のウランを指す。ウラン鉱石にはウラン235が0.7%程度しか含まれておらず、残りの99.3%は核分裂を起こしにくい質量数238のウラン(ウラン238)が占めている。劣化ウランは、ウラン鉱石と比べてウラン235の割合がさらに低い。

参考拠点:NXR開発センター
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