国立研究開発法人日本原子力研究開発機構

平成28年4月21日
国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構
国立大学法人鳥取大学
国立研究開発法人日本原子力研究開発機構
J-PARCセンター
一般財団法人総合科学研究機構

パーキンソン病発症につながる「病態」タンパク質分子の異常なふるまいを発見
―発症のカギとなるタンパク質の線維状集合状態の形成過程解明の手がかりに―

【発表のポイント】

国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(理事長 平野俊夫。以下「量研機構」という。)量子ビーム科学研究部門高崎量子応用研究所東海量子ビーム応用研究センターの藤原悟上席研究員・松尾龍人主任研究員、大阪大学(総長 西尾章治郎)大学院医学系研究科の望月秀樹教授・荒木克哉医師、鳥取大学(学長 豊島良太)八木寿梓助教、J-PARCセンター(センター長 齊藤直人)柴田薫研究副主幹、総合科学研究機構(理事長 西谷隆義)山田武研究員らは共同で、中性子準弾性散乱1)装置を用いて、パーキンソン病の発症と密接に関係する脳内のあるタンパク質の動きを分子レベルで調べ、このタンパク質同士が線維状に集合した状態で異常なふるまいを示すことを世界で初めて発見しました。

パーキンソン病発症には、脳細胞中の「α-シヌクレイン2)」というタンパク質が線維状に集合した状態(「アミロイド線維3)」と呼ばれる)となることが関係すると考えられており、どのようなメカニズムでこのアミロイド線維が形成されるのかに強い関心が寄せられています。そこで研究チームは、タンパク質分子の「動きやすさ」に着目し、アミロイド線維状態とバラバラに存在する正常状態のタンパク質の動きを、J-PARC4)の中性子準弾性散乱装置を用いて調べました。その結果、アミロイド線維ではタンパク質同士が強く結合して動きが制限されているにもかかわらず、内部におけるタンパク質の原子の運動は正常な状態よりも大きくなる、つまり、アミロイド線維においては、正常状態よりもタンパク質が自由にふるまえることを明らかにしました。

本成果は、アミロイド線維の形成が自然に進むことを示唆しており、パーキンソン病の発症のカギとなるアミロイド線維形成過程の解明の手がかりとなるだけでなく、タンパク質のアミロイド線維形成が関係する種々の疾病について、発症の仕組みの解明と、さらにその知見に基づく疾病の抑制に貢献することが期待されます。

本研究成果は、オープンアクセスの国際雑誌「PLOS ONE」に、4月20日(米国東部標準時間)に掲載されました。

参考部門・拠点: J-PARCセンター

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