国立研究開発法人日本原子力研究開発機構

平成28年3月18日
国立研究開発法人日本原子力研究開発機構

工業材料で製作した熱化学法ISプロセス水素製造試験装置による水素製造に成功
―実験室段階から高温ガス炉による水素製造の研究開発が前進―

【発表のポイント】

国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(理事長 児玉敏雄、以下「原子力機構」という。)では、茨城県大洗町において、高温ガス炉1)の熱を利用するための熱化学法ISプロセスによる水からの水素製造技術の研究開発を実施しています。本プロセスは、将来950℃の高温の熱を供給できる高温ガス炉と組み合わせることで、炭酸ガスを排出することなく、大量の水素を高効率・低コストで製造するシステムを構築することが期待されます。

図1

熱化学法ISプロセスによる水素製造試験装置
(3反応工程で構成)

熱化学法ISプロセスは、ヨウ素(I)と硫黄(S)を用いた3つの化学反応を組み合わせて水を分解する化学プロセスであり、腐食性のある流体の温度・種類が異なる3反応工程(硫酸分解工程、ブンゼン反応工程、ヨウ化水素(HI)分解工程)で構成されます。工業化を見据え、実験室段階(反応器などをガラスで製作)に続く取り組みとして、3反応工程毎の環境に耐え得る工業材料(金属、セラミックス等)を用いて反応器を開発し、これらの反応器を3反応工程へそれぞれ組み込んだ世界最先端の装置を製作しました。この度、各反応工程別の機能確認に加え、世界でも例の少ない3反応工程を連結した水素製造試験装置の試運転に成功し、実用化に向けた研究開発が大きく前進しました。

今後、水素製造試験装置の試運転で明らかになったヨウ素の析出防止対策等の改良を行い、3反応工程を連結したより安定的な水素製造を目指します。本格的な試験により、運転制御性、長時間運転安定性、機器耐食性の確証など、水素製造システムの実用化に必要な研究開発を進めていく予定です。さらに、HTTR(高温工学試験研究炉)2)を用いて、世界で初めて原子力による水素製造を実証することを目標としています。

参考部門・拠点: 高温ガス炉水素・熱利用研究センター

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