国立研究開発法人日本原子力研究開発機構

平成27年9月28日
国立研究開発法人日本原子力研究開発機構

イオン照射による新奇複合ナノチューブの新たな創製方法の開発に成功(お知らせ)
-小型化・省電力化された電子・発光デバイスへの道を拓く-

【発表のポイント】

国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(理事長 児玉敏雄。以下「原子力機構」という) 先端基礎研究センターの朝岡秀人研究主席と量子ビーム応用研究センターの田口富嗣研究主幹らは、イオン照射により、結晶状態をコントロールできるようにしたことで、新しい構造を持った新奇複合炭化ケイ素(SiC)系ナノチューブ1)の創製方法の開発に成功しました。

一次元ナノ材料、その中でもナノチューブは、その特異な形状やサイズが小さいことにより、通常の材料にはない電気・光学特性を示す可能性があります。特にSiCは重要な半導体材料であることから、我々は、多結晶SiCナノチューブの創製を試み、成功しています。これまでに、結晶シリコン(Si)と比べて、アモルファス2)Siは半導体特性が異なり、光を吸収しやすいために太陽電池に応用されています。このように、材料の結晶状態をコントロールすること、さらにそれらを複合化することで、材料の高機能化が期待されますが、今まで、ナノチューブの形状を保ったまま、結晶状態をコントロールすることができませんでした。今回、イオン照射により、新たに二点の成果をあげることができました。一つ目は、ナノチューブの形状を保ったまま多結晶からアモルファス化することに成功し、一本のナノチューブ内に多結晶領域とアモルファス領域を複合化させた構造を実現できたことです。また、二つ目として、SiCナノチューブ内に、カーボン層の方向が90°傾いた新たな構造を持つカーボンナノチューブの創製に成功したことです。カーボンナノチューブやグラフェンは黒鉛と同じ炭素材料であるが、黒鉛とは違う構造を持つことで、優れた電気物性を発現することが知られているため、今回の新奇構造カーボンナノチューブもまた、今までにない新しい物性を示す可能性が期待されます。

本手法は、他のセラミックナノ材料にも適用可能であるため、様々な新奇複合セラミックナノ材料の創製が可能となり、それらを用いた小型化・省電力化された電子・発光デバイスの開発等、今後の更なる研究成果が期待されます。

図1
参考部門・拠点: 先端基礎研究センター

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