独立行政法人日本原子力研究開発機構

平成26年12月22日
独立行政法人日本原子力研究開発機構

核融合中性子源用の高速液体リチウム流の長期安定性を実証
-日欧で進める国際核融合材料照射施設の工学実証活動が大きく進展-

【発表のポイント】

独立行政法人日本原子力研究開発機構(理事長 松浦 祥次郎、以下「原子力機構」という。)は、日欧の共同事業で進めている幅広いアプローチ活動1)(以下「BA活動」という。)において、世界最大リチウム流量を持つ試験装置にて、国際核融合材料照射施設2)(以下「IFMIF」という。)の核融合中性子源に要求される性能を満たしつつ、目標の1,000時間を超え1,300時間以上にわたる運転を実施し、長期安定性能を実証することに世界で初めて成功しました。本成果は、核融合原型炉開発に必要な、核融合炉材料照射環境を模擬するIFMIFの開発を大きく前進させるものです。

原子力機構では、BA活動の一環として、青森県六ヶ所村の国際核融合エネルギー研究センターを中心にIFMIFの工学設計・工学実証活動(IFMIF/EVEDA)2)事業を実施しています。核融合エネルギーの早期実現のためには、核融合反応で生成する高エネルギー・高密度の中性子を模擬した環境下で核融合炉材料等の照射試験を行い評価することが重要です。このため、IFMIFの建設が様々な国によって期待されています。IFMIFでは、高エネルギーに加速した重陽子ビームを、幅260 mm、厚さ25 mm、秒速15 mの自由表面リチウム流に入射し、中性子を連続的に長時間発生させます。この時、リチウム流の厚さを長時間にわたって±1 mmの範囲内で保つことが必要ですが、自由表面を持つ高速の流れは不安定になりやすいことが課題でした。

大洗研究開発センターに建設した世界最大流量を持つ液体リチウム流動試験装置は、これまでの研究成果などにより開発した実機規模(1/2.6スケール)のものです。本装置の建設、運転などには、同センターにおける高速炉開発のための同じアルカリ金属であるナトリウムの液体流動試験施設やその知見などが生かされました。また、液体リチウムターゲット表面の3次元形状計測のため新たな波高計測法(レーザープローブ法3))を導入しました。これらの装置を用い、IFMIFの実機液体リチウムターゲット4)に要求されるリチウム流の安定性能(厚さ変動±1 mm以下)を満足するとともに、長期に安定な液体リチウム流が実現可能であることを世界で初めて実証し、BA活動後の中性子源施設の建設に向け大きな成果を得ました。

参考部門・拠点: 核融合研究開発部門

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