【用語説明】

1) 幅広いアプローチ(BA(Broader Approach))活動

日欧の国際協力の下、国際熱核融合実験炉であるITERを補完すると共に、イーターの次のステップである原型炉の早期実現を目指した研究開発プロジェクトです。この活動は国際核融合エネルギーセンター、国際核融合材料照射施設(IFMIF)の工学実証・工学設計活動、サテライト・トカマク計画の3つの事業を日欧共同で実施しているものです。

※BAに関するホームページ:http://www.naka.jaea.go.jp/BA/index.html

2) 国際核融合材料照射施設の工学設計・工学実証活動(IFMIF/EVEDA)

国際核融合材料照射施設(IFMIF:International Fusion Materials Irradiation Facility)は、国際エネルギー機関(IEA)の活動の下で、重陽子-リチウム(D-Li)ストリッピング反応による加速器型中性子源として1995年から5年かけて概念設計をまとめるとともに、2000年以後は重要な構成要素である大電流重陽子加速器設備、標的設備(高速液体Liターゲット)、照射モジュールを収容する試験設備(テストセル)等の様々な技術開発が進められてきました。2004年1月に完成したこの総合設計報告書(CDR: Comprehensive Design Report)を基に、日欧共同事業であるBA活動における3つの主要事業の一つとしてIFMIFの工学実証・工学設計活動(EVEDA:Engineering Validation and Engineering Design Activity)事業が2007年6月から開始されました。

IFMIF施設は「加速器設備」、「標的設備」、「試験設備」という3つの主要設備から構成されており、「加速器設備」で生成された高エネルギーの重陽子(D+)ビームを「標的設備」で流れる液体リチウムに入射して核融合反応と類似のエネルギーの中性子を発生させ「試験設備」に装荷した試料の照射試験を行う計画です。

BA活動では、将来IFMIFが建設される際に主要となる3設備(加速器設備、標的設備、試験設備)について、主要な機器の原型装置を製作・運転することにより工学的な成立性を実証する活動、及びIFMIFの工学設計を日欧共同で実施しています。

※IFMIFに関するホームページ: http://users.ifmif.org/ifmifweb/ (英語)

3) レーザープローブ法

本実証試験において、液体リチウムの自由表面の安定性の観測のため新たに導入したレーザープローブ法とは、飛行時間法(Time-of-flight method)を利用した高精度レーザー距離計(株式会社光コム社製)を用い、平均液位からの変動の評価を、海面水位に関する波高や周期を求める際に適用されているゼロアップクロス法(Zero-up-cross method)により解析し、高速液体リチウム流の表面の平均液位と波高分布を計測するという原子力機構で独自に考案した手法です。計測点を移動させることで、高速の液体リチウム流表面の3次元形状の計測を始めて試みた方法で、従来の接触式の波高計測法に比べて精度を1桁向上させ、高精度(0.02 mm)に波高の計測ができることを実証しました。

4) 液体リチウムターゲット

真空下を凹面形状の背面壁に沿って秒速15 mの速度で流下する幅250 mm、厚さ25 mmの液体リチウムの自由表面(容器の壁や配管と接していない液面)を有する流れのこと。IFMIFの場合、片面は背面壁に接していますが、片面は真空と接した自由表面となっています。高速で流れる自由表面流は変動し、不安定になりやすいため、今回の成果のような高速で安定な自由表面リチウム流を作るには、非常に高度な技術が必要です。

5) ITER(国際熱核融合実験炉:「イーター」)

制御された核融合プラズマの維持と長時間燃焼によって核融合の科学的及び技術的実現性を実証することを目指したトカマク型(超高温プラズマの磁場閉じ込め方式の一つ)の核融合実験炉です。1988年に日本・欧州・ロシア・米国が共同設計を開始し、2005年にフランスのサン・ポール・レ・デュランスに建設することが決定しました。2007年に国際機関「イーター国際核融合エネルギー機構(イーター機構)」が発足し、日本、欧州連合、中国、インド、韓国、ロシア、米国の7極が参加しています。現在、イーターが格納される建屋の建設が進められており、また、各極が調達する、イーターを構成する様々な機器の調達取決めが締結されて、各極で機器の製作しています。2020年頃からのプラズマ実験の開始を目指しています。イーターでは、重水素と三重水素を燃料とする本格的な核融合による燃焼が行われ、核融合出力500 MW、エネルギー増倍率10を目標としています。

イーター計画に関するホームページ http://www.naka.jaea.go.jp/ITER/index.php (日本語)

イーター機構のホームページ http://www.iter.org/default.aspx (英語)


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