独立行政法人日本原子力研究開発機構/国立大学法人東北大学/J-PARCセンター

磁性体で「スピンカイラリティ」由来の強誘電性を立証
―磁性と強誘電性を併せ持つ多機能性材料開発に新しい道筋―

発表者:

三田村裕幸(東京大学物性研究所 助教)
綿貫竜太 (横浜国立大学大学院工学研究院 特別研究教員)
金子耕士 (日本原子力研究開発機構量子ビーム応用研究センター 研究副主幹)
小野崎紀道(横浜国立大学大学院工学府 元大学院博士課程前期学生)
天羽祐太 (横浜国立大学大学院工学府 元大学院博士課程前期学生)
橘高俊一郎(東京大学物性研究所 助教)
小林理気 (東京大学物性研究所 特任研究員)
志村恭通 (東京大学物性研究所 特任研究員)
山本 勲 (横浜国立大学大学院工学研究院 教授)
鈴木和也 (横浜国立大学大学院工学研究院 教授)
榊原俊郎 (東京大学物性研究所 教授)

発表のポイント:

◆磁性体においてスピンカイラリティ(図1)に由来する強誘電性(注1)を観測することに成功
◆従来の理論では説明できない全く新しいメカニズムによるマルチフェロイック(注2)
◆省エネルギーの次世代型メモリや新規の光学デバイスの開発へ

発表概要:

鉄イオンなどの磁性イオンは1つ1つが小さな磁石(スピン)としての性質を持ちます。3つの磁性イオンが正三角形の頂点に配置され、お互いのスピンが反対を向こうとする力が働けば、互いに120度だけ傾いた方向を向いている状態が安定になります(図1)。これには2通りの状態があり、この違いを磁性体ではスピンカイラリティと呼んでいます。しかしながらこの性質を物質において観測することは、理論が提唱されてから約30年の間実現されていない未解決問題でした。

東京大学物性研究所の三田村裕幸助教と榊原俊郎教授、横浜国立大学大学院工学研究院の綿貫竜太特別研究教員、日本原子力研究開発機構量子ビーム応用センターの金子耕士研究副主幹らは、磁性体において「スピンカイラリティ」に由来する強誘電性が現れることを、横浜国立大学のパルス強磁場(注3)発生装置と米国オークリッジ国立研究所の広角中性子回折装置(注4)を用いて初めて明らかにしました。これは、スピンカイラリティが物質の機能として現れた初めての例であり、従来の理論では説明できない全く新しいメカニズムによるものです。

本研究の成果は、省エネルギーの次世代型メモリや新規の光学デバイスの開発につながると期待されます。本成果の詳細は、Physical Review Letters(10月3日付け)に掲載されます。

参考部門・拠点: 量子ビーム応用研究センター

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