独立行政法人日本原子力研究開発機構

平成26年8月21日
独立行政法人日本原子力研究開発機構

世界最高性能の核融合炉燃料プラズマ加熱用マイクロ波源を開発
-2つの周波数で長時間高出力を実現-

【発表のポイント】

独立行政法人日本原子力研究開発機構(理事長 松浦祥次郎。以下「原子力機構」という。)は、核融合炉において燃料プラズマを加熱するための高出力マイクロ波源「ジャイロトロン」1)の研究開発を進めてきましたが、このたび、2つの周波数が選択的に出力可能なジャイロトロンを新たに開発し、核融合炉で必要となる1000キロワットの高出力を100秒以上の長時間にわたり維持することに世界で初めて成功しました。 この成果により、核融合炉を高性能化するために必要な、加熱位置可変式マイクロ波加熱装置2) の実現に向けて大きく前進しました。


核融合炉において燃料プラズマを数億度にまで加熱する方式として、強力なマイクロ波を入射する方式があります。 このマイクロ波の周波数を変えて、加熱する位置を制御することで、炉の性能を向上させることができます。 ジャイロトロンでは、電子を強磁場中で加速し、その回転エネルギーをマイクロ波に変換して出力しますが、出力されないエネルギーは損失としてジャイロトロン内部の機器を加熱して、長時間高出力の妨げとなります。 そのため、従来は出力されるマイクロ波の周波数を1つに絞って損失を低減するのが一般的であり、共通の設計により複数の周波数を得ることは困難でした。 このたび、原子力機構では、「3極型電子銃」3) を用いて周波数ごとに電子ビームの特性を変えることで、2つの周波数(110と138ギガヘルツ4))の両方に対して低損失が実現できることに着目し、ジャイロトロンを設計・製作しました。 その結果、2つの周波数で1000キロワットの出力を、ジャイロトロン各部の温度が安定する100秒以上の長時間にわたり維持することに世界で初めて成功しました。


今回開発した2周波数ジャイロトロンは、現在、日欧共同で茨城県那珂市に建設中の超伝導トカマク型核融合実験装置JT-60SA5)において使用する予定であり、出力マイクロ波の周波数を切替えできる特長を生かして、実験装置の高性能化を目指します。 今後、2周波数ジャイロトロンをさらに発展させて、加熱位置可変式マイクロ波加熱装置を実現することにより、核融合炉の高性能化に貢献することができます。


なお、本研究成果は、平成26年10月にロシアのサンクトペテルブルクで開催される第25回IAEA核融合エネルギー会議で発表する予定です。

参考部門・拠点: 核融合研究開発部門

戻る