用語解説

1) ウラン系強磁性超伝導体

UGe2, URhGe, UCoGeでは、強磁性状態で超伝導が出現し、両方の秩序状態が共存する。一般に強磁性は超伝導を破壊し、共存は難しいと考えられてきたことから、ウラン系強磁性超伝導体の発見は多くの興味を集め、現在でも盛んに研究が行われている。

2) 相転移

水が氷点下0℃以下で氷になるなど、物理的、化学的に均一な物質の相 (Phase) が他の形態の相へ移り変わること。

3) 臨界点

相転移が起きる温度または圧力。磁石の場合、磁石になる温度。

4) 臨界現象

臨界点近傍で見られる、物理量(密度、磁化、比熱など)の挙動に異常性が現れる現象。例えば磁石は、磁化率(磁石になり易さの指標)が発散する。

5) 磁化率

外部から加える磁場に応答する磁化の比率。「磁石になりやすさ」の目安。相転移温度では磁化率が発散し、磁石が誕生する。

6) 超臨界水

水は、臨界点の温度(374 ℃)及び圧力(22.1 MPa)を超えると液体と気体の区別が付かなくなる「超臨界水」となる。超臨界水は、高い拡散性(空間中への拡がる能力)と高い溶解性(物を溶かす能力)を持つ。火力発電ではタービンを回す蒸気として利用されている。

7) 単結晶

原子の規則的な配列が巨視的な大きさまで保たれている物質。水晶など、天然に産出する鉱物が代表例である。日常目にする物質の多くは、小さな単結晶がばらばらな向きに集まったものであり、方向性は失われている。強磁性がどの方向に向きやすいのかを調べるためには、単結晶を作成して磁化の大きさを測定する必要がある。

8) 臨界指数

臨界現象4)を数学的に示したもの。例えば、磁石のなり易さ(磁化率χ)は、臨界指数γを用いて、「c 〜 (TTc) 」と表すことができる。ここで、T及びTcは、それぞれ温度及び臨界点である。磁化の温度及び磁場に対する応答からはβ,δと呼ばれる臨界指数が得られる。一つの臨界現象に、一つの臨界指数の組み合わせ(β,δ,γ)が対応する。これまでに、磁性を始めとする様々な相転移について理論的研究が行われ、それぞれについて臨界指数の組合せが得られている。

(補足説明)「磁石のタイプ」について

人工的に作成したものも含めて、世の中には沢山の磁石があり、様々なタイプが存在します。個々の原子磁石が特定の方向にしか向かないもの(一軸的)や、どの方向にも向く事が出来るもの(等方的)、さらにはある平面内にしか向かないもの(平面的)があります。さらに、原子磁石の相互作用の違いに応じていくつかに分類されています。

臨界指数はこれらの「磁石のタイプ」に応じて固有な値を示します。金属の磁石でも絶縁体の磁石でも「磁石のタイプ」が同じなら臨界指数の値(β,γ,δ)は同じとなります。言い換えれば、臨界現象を調べることで「磁石のタイプ」がわかります。


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