独立行政法人日本原子力研究開発機構

平成26年6月23日
独立行政法人日本原子力研究開発機構

ITER用高性能超伝導導体が完成、米国への引き渡しを開始
-ITERの建設における重要な節目-

【発表のポイント】

独立行政法人日本原子力研究開発機構(理事長 松浦祥次郎、以下「原子力機構」という)は、南フランスのサン・ポール・レ・デュランスに建設中の核融合実験炉ITER(イーター)1)の主要機器の一つである電磁石(中心ソレノイド2))で用いる高性能超伝導導体3)(以下「導体」という)の全49本のうち最初の5本を完成させ、6月25日(予定)に、次の製作工程である導体を用いた中心ソレノイドの製作を担当する米国への引き渡しを開始します。本導体の製作に当たっては、ITER機構と原子力機構が協力して開発した「繰り返し電磁力」に対する性能劣化を回避するための手法を用いて、技術的課題を克服し高性能化した導体の量産に成功しました。国際合意された製作分担に基づくITER用の機器が初めて海外に渡ることになり、ITERの建設における日本の貢献の重要な節目になります。


ITERの中心ソレノイドを構成する導体は20年の運転期間で6万回の「繰り返し電磁力」を受けますが、従来の導体のサンプルを用いた試験では、「繰り返し電磁力」に対して徐々に性能が低下する技術課題に2010年に遭遇しました。この性能低下は導体を構成する一部の超伝導素線がジャケット4)内で変形することが原因で起こることを原子力機構が見出し、ITER機構と協力してジャケット内で超伝導素線が変形しにくい、撚りピッチ5)を短くする改良を行いました。


2012年に導体サンプルを製作して性能確認試験を行った結果、「繰り返し電磁力」に対して性能低下は見られず、高性能導体の開発に成功しました。原子力機構では、導体製作の全工程を一括で受注できるメーカーは世界中に存在しないことから、メーカーが受注可能な製作範囲毎に複数(元請けで6社)のメーカーと契約し、また、必要な製造設備を準備し、それらの技術を取りまとめることで導体の量産化を可能にしました。


導体の製作は2017年まで続き、定期的に米国に輸送される予定です。


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