独立行政法人日本原子力研究開発機構

平成24年11月16日
独立行政法人日本原子力研究開発機構

特定エネルギーで生じる新しいDNA損傷機構を発見
−放射線によるDNA損傷の解明に向けて−

【発表のポイント】

独立行政法人日本原子力研究開発機構(理事長 鈴木篤之。以下、「原子力機構」という。)先端基礎研究センター放射場生体分子科学研究グループの岡壽崇博士研究員(現大阪大学産業科学研究所特任助教)と横谷明徳グループリーダー等の研究チームは、東京農工大学大学院工学研究院(学長 松永是)の鵜飼正敏教授と共同で、大型放射光施設(SPring-8)のX線を用いて、生体内のDNAが放射線によって損傷を受ける際に、これまでに知られていない損傷機構があることを発見しました。

この発見は放射線、特に癌の治療や植物の品種改良で使われているイオンビームなどが、生体中のDNA分子をどのように変化させていくかの機構解明につながり、放射線の医療や産業への応用に大きく貢献することが期待されます。

放射線の中でもイオンビームなどの高速の荷電粒子が照射された細胞中では、荷電粒子がさまざまな大きさのエネルギーをDNA分子に与え、このエネルギーに応じ、多様な損傷プロセスが同時並行的に進行します。しかしこれまでは、個々のプロセスを抽出し解析する手法がなかったため、DNA損傷プロセスの全貌を明らかにすることができませんでした。

原子力機構では、高速荷電粒子の代わりに特定のエネルギーのX線を用いることで、この問題の解決を図ってきました。今回、照射X線のエネルギーが窒素や酸素のイオン化レベルをわずかに超えた領域で、これまでに知られていないDNA損傷機構があることを見いだしました。

本研究成果は、米国物理学会誌『Physical Review Letters』電子版に近日中に掲載されます。

以上

参考部門・拠点:先端基礎研究センター

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