平成22年12月13日

科学技術振興機構(JST)/理化学研究所/日本原子力研究開発機構(JAEA)/東京大学

科学技術振興機構(JST)
理化学研究所
日本原子力研究開発機構(JAEA)
東京大学

ありふれた永久磁石をマルチフェロイック磁石に
(強磁性体と強誘電体の性質を持つ多能材料に一歩前進)

JST 課題解決型基礎研究の一環として、東京大学 大学院工学系研究科の十倉 好紀 教授とJST 戦略的創造研究推進事業 ERATO型研究「十倉マルチフェロイックスプロジェクト」の徳永 祐介 研究員らの研究グループは、室温でのマルチフェロイック材料につながる新しい材料を開発しました。

「マルチフェロイック材料」とは、磁石の性質(強磁性)と誘電性(強誘電性)の性質を併せ持つ材料のことです。電場(電圧)により磁石の強度を制御でき、また、磁場によっても電気分極の強度を制御できるという、今までにない画期的な機能を持っており、世界中で激しい競争が始まっています。このような機能は、磁石の力を担う電子のスピンが円錐状に回転している構造を取る「円錐スピン磁石」注1)の場合に現れます。これまで、室温でその構造を取る物質はほとんどなく、さらに、マルチフェロイックの特性を持つという報告はありませんでした。

本研究グループは今回、家庭やモーターに使われているごくありふれた永久磁石(フェライト磁石)に特殊な元素を微量に添加することで、室温においても円錐スピン磁石の構造を保つ物質の合成に成功しました。また、この物質は、低温で磁場により電気分極の大きさや方向を制御することが可能であり、マルチフェロイック材料としての特性を示すことも確認されました。

さらに、研究用原子炉JRR−3における中性子散乱実験によって、この円錐スピン磁石構造は90℃以上まで保持されていることが明らかになったことから、今後の研究により室温でもマルチフェロイック特性を示すことが期待できます。

この結果は、マルチフェロイック特性の室温動作に向けた重要な設計指針を与えるもので、将来的には低消費電力でさらなる高集積メモリデバイスなどへの応用が期待されます。

本研究は、理化学研究所、日本原子力研究開発機構、東京大学と共同で行われました。

本研究成果は、2010年12月17日(米国東部時間)発行(予定)の米国物理学会誌「Physical Review Letters」に受理され、オンライン版で近日中に公開されます。

本成果は、以下の事業・研究プロジェクトによって得られました。

戦略的創造研究推進事業 ERATO型研究

研究プロジェクト:「十倉マルチフェロイックスプロジェクト」

研究総括:十倉 好紀(東京大学 大学院工学系研究科 教授)

研究期間:平成18〜23年度

JSTはこのプロジェクトで、磁化と電気分極の強い相関を持つマルチフェロイック物質の創製と、その物性を説明する学理の構築を総合的に行うことで、材料の新たな設計指針を見いだしつつ、新規材料群の開拓を行っています。

以上

参考部門・拠点:東海研究開発センター 原子力科学研究所

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