<用語解説>

注1)円錐スピン磁石
「らせん磁気秩序」(注2参照)を持つスピンのらせん状態は、らせんが進行する方向に垂直な面内のみにスピン成分を持つ場合と、進行成分にもスピン成分を持つ場合(スピンが進行方向に傾く場合)があります。特に後者の場合、スピンを矢に例えたなら、矢尻は特定方向の直線上に固定され、矢の先端は進行方向に傾くと同時に円を描きながら進行するように見えるスピン配置を取ります(図2の中図)。このように円錐側面を回転しながらスピンが特定方向に進行するように見えるスピン配置を持つ磁石を「円錐スピン磁石(または、コニカル磁石)」と呼びます。
注2)らせん磁性体
結晶中のスピンが、ある特定の方向にらせん状に回転しながら空間的に分布する状態を「らせん磁気秩序」と呼び、そのような状態を持つ物質のことを「らせん磁性体」と呼びます。
注3)六方晶バリウムフェライト(BaFe1219
酸化鉄を主成分とするセラミックスの総称であるフェライトは、結晶構造の違いにより、「スピネル型フェライト」、「ガーネット型フェライト」、「六方晶フェライト」に分類され、AFe1219の組成式で表されるものを「六方晶フェライト」と呼びます。さらに「六方晶フェライト」には、基本構造の違いによりM型、Y型、W型、Z型などと呼ばれるさまざまな物質が存在しますが、本研究で用いたBaFe1219は、その中でも最も単純なM型の構造を取ります。BaFe1219やストロンチウムフェライト(SrFe1219)は、フェライト磁石としてモーター用などの工業用に大量に量産使用されています。家庭にある冷蔵庫の扉に張り付くマグネット(磁石)も、このタイプのものがほとんどです。高価な希土類元素を含まず、地球上に大量に存在する元素からなることから、今後も増産が続く永久磁石です。

<論文名>

“Multiferroic M-type hexaferrites with a room-temperature conical state and magnetically controllable spin helicity”

(室温でコニカル磁気秩序を持ち、スピンヘリシティを磁場により制御可能なマルチフェロイックM型ヘキサフェライト)


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