平成21年2月5日
独立行政法人日本原子力研究開発機構

世界の原子力事故に対応可能な迅速大気拡散予測システムWSPEEDI-IIを開発
−世界的な原子力発電所の増加に備える−

独立行政法人日本原子力研究開発機構(理事長・岡ア俊雄、以下、原子力機構)原子力基礎工学研究部門の茅野政道研究主席らの研究グループは、世界の原子力施設で万一の事故により放射性物質が異常放出された場合に、計算シミュレーションにより、放射性物質の大気拡散や放出地点を迅速に推定し、欧米との情報交換も可能な緊急時環境線量情報予測システム世界版“WSPEEDI: Worldwide version of System for Prediction of Environmental Emergency Dose Information”の第2版(WSPEEDI-II)を完成させました。

WSPEEDI-IIの新たな機能の特徴としては、(1) 国外の地域でも、放出点数10kmから半地球規模まで、高精度で放射性物質の移動・拡散・沈着や被ばく線量を予測できる、(2)外国からの事故情報よりも先に、国内モニタリングポストに線量上昇が現れる場合に備え、事故の発生地点や放出量を大気拡散計算とモニタリングの融合により推定できる、(3)欧米の同種システムと予測情報を交換でき、大気拡散の将来予測に対する計算結果の信頼性評価ができる、等が挙げられます。このシステムの予測性能は、チェルノブイリ事故時の欧州での環境汚染データや、1994年に行われた欧州広域拡散実験ETEXのデータを用いて検証されており、世界でもトップレベルの能力を有すると考えられます。

エネルギー需要の増大や地球温暖化問題を背景に、中国やインドでの原子力発電所の建設、米国での原子力利用の再評価など、世界的に原子力施設の増加が予想されていますが、万一チェルノブイリ事故のような大規模な事故が発生した場合には、被災国における環境汚染のみならず、放射性物質が国境を越えて他国に飛来する可能性があります。

そのような緊急事態に備え、WSPEEDI第1版は1997年に完成しましたが、その後の使用経験に基づき、さらに改良を重ねた結果、今般、飛躍的に機能を向上した第2版を完成しました。

今後、本システムが実用化されれば、国外原子力事故時において、国内外の公衆の安全確保や航空機等による環境モニタリングなどの緊急時対策を支援する役割が期待できます。また、大気環境問題の解明等の地球環境研究にもシステムの活用を図っていきます。

以上

参考部門・拠点:原子力基礎工学研究部門

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