用語集

1) SPEEDI
SPEEDIは緊急時環境線量情報予測システム(System for Prediction of Environmental Emergency Dose Information)の略称である。このシステムは、日本国内で放射性物質の異常放出事故が発生した場合、事故地点を含む25~100 km領域の放射性物質の大気拡散、地表沈着及び被ばく線量を迅速に予測することを目的としており、旧日本原子力研究所(現在、日本原子力研究開発機構)により開発され、現在は、文部科学省から委託を受けた(財)原子力安全技術センターが情報ネットワーク整備を含めた運用・調査を行っている。
2) WSPEEDI-I
WSPEEDIは、世界の任意地点での原子力事故に対応出来るようにSPEEDIを大幅に改良した世界版SPEEDI(Worldwide version of SPEEDI)の略称である。その第1版であるWSPEEDI-Iは、チェルノブイリ事故を契機に開発に着手し、モデル開発や検証、システム化を経て、1997年に完成した。また、1998年に起きたスペインのArgecirasでの137Cs誤焼却事故では、米国ローレンス・リバモア国立研究所の大気放出勧告センター(NARAC)と大気拡散解析を行ってきた。これらの使用経験に基づく改良により、今般、第2版が完成した。
3) 大気力学モデル
WSPEEDI-IIの気象場計算モデルとして導入した、ペンシルバニア州立大学(PSU)および米国大気研究センター(NCAR)で開発された大気力学モデルMM5は、運動量および熱エネルギーに加えて、水蒸気量、雲水量(液体、固体)についての保存式を解くことにより、これら物理量に対応する風速、温位等の気象要素を計算する。また、降水、熱放射、地表面作用、大気境界層(乱流)などの個別過程それぞれについて、物理過程を考慮することにより、大気拡散計算の精度に大きな影響を及ぼす気象場の再現性を向上させることができる。
4) IXP (International Exchange Program)
米国ローレンス・リバモア国立研究所のNARACが運用するIXPは、NARACや他の地球規模線量予測システムの予測結果を比較し、緊急時対応関係者等に提供できるソフトウエアシステムのプロトタイプである。登録されたユーザーは、予測結果をIXPのホームページにアップロードでき、他のシステムの予測結果の検索も可能である。現在はプロトタイプのため、限られたユーザーが登録されている。
5) ENSEMBLE
欧州委員会の環境・持続可能性研究所の運用するENSEMBLEは、欧州を中心とした各国の緊急時対応システムの長距離拡散予測結果の比較と、最適化を目的としたソフトウエアシステムである。IXPのように予測結果をホームページにアップロードでき、他のシステムの予測結果の検索も可能である。現在、計20カ国24機関が参加している。

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