平成19年6月29日
独立行政法人日本原子力研究開発機構
 
国産の高品質黒鉛を、実用高温ガス炉へ展開するため、特別グループを設置
〜 東洋炭素株式会社と共同で黒鉛の照射挙動解明 〜

 
●ポイント
 超高温ガス炉(VHTR)とこれによる水素製造の研究開発が世界的に進められている。これまで日本が研究開発を進めてきた高品質黒鉛をVHTR炉心用材料として展開すべく、世界に先駆けて照射データベースを構築し照射効果の評価手法を開発するため、7月1日付けで原子力エネルギー基盤連携センター内に東洋炭素株式会社と「黒鉛・炭素材料挙動評価特別グループ」を設置する。


●概要
 独立行政法人日本原子力研究開発機構(理事長 岡撫r雄、以下「原子力機構」という)は、高温ガス炉1)とこれによる水素製造技術の研究開発を進めており、世界的な機運が高まっている第4世代原子力システム2)の一つである超高温ガス炉(VHTR)3)の開発において、高温工学試験研究炉HTTR4)の燃料が世界最高の品質を示すなど世界のトップランナーとして注目されています。
 東洋炭素株式会社(代表取締役社長 近藤照久、以下「東洋炭素(株)」という)製の微粒等方性黒鉛5)IG-110は、強度、照射安定性について優れた特性を有しており、高温ガス炉の炉心部に用いられている現在世界で唯一の黒鉛です。これまで、HTTRの開発のため中性子照射量約2 dpa(displacements per atom:照射による格子原子あたりのはじき出し数)6)までの照射効果7)を把握していますが、実用高温ガス炉では約5 dpaまでとさらに高い照射量で使用されるため、この領域での照射効果を評価する手法とそれを検証するための照射データの拡充が必要となります。
 原子力機構では、HTTRで使用実績のあるIG-110黒鉛を国内外の実用高温ガス炉の炉心用材料として展開するため共同で研究開発を進めたいとの東洋炭素(株)からの要請を受け、両者の間で黒鉛、炭素材料の中性子照射効果の特性評価分野等について包括的な研究協力協定を締結し、平成19年7月1日付けで原子力エネルギー基盤連携センター内に「黒鉛・炭素材料挙動評価特別グループ」を設置して、高速実験炉「常陽」を用いて黒鉛の照射挙動を解明していくこととしました。東洋炭素(株)は照射装置製作費等、原子力機構は照射試験等を分担し、共同で研究を進めていきます。
 本共同研究は、世界に先駆けてVHTRでの使用条件まで国産の高品質黒鉛の照射データベースを構築し照射効果の評価手法を開発するためのもので、“高温の熱源や経済性に優れた発電手段となり得る高温ガス炉とこれによる水素製造技術の研究開発等を推進する”との原子力政策大綱に沿ったものであり、貴重な成果が得られるものとして注目されています。


 【補足説明資料
 【用語解説
以 上

参考部門・拠点:原子力基礎工学研究部門


もどる