平成18年9月22日
独立行政法人日本原子力研究開発機構
 
フラーレン-コバルト化合物を含むナノグラニュラー薄膜に巨大な磁気抵抗効果を発見
−フラーレンのスピントロニクス分野への応用を拓く−

 
●ポイント
 ・ 新物質C60-Co化合物を用いて、最高レベルの磁気抵抗を実現
 ・ 電子の持つ電荷だけでなく電子スピン1)の状態を利用して情報の処理や記録を行う新しいエレクトロニクス分野であるスピントロニクス分野2)に、フラーレン3)を含む材料(フラーレン基材料)が有用であることをはじめて実証
 ・ トンネル磁気抵抗効果4,5)を利用した磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)6)やスピントランジスタ7)への応用が期待

●概要
 日本原子力研究開発機構【理事長 殿塚猷一】(以下「原子力機構」という。)は、東北大学金属材料研究所(以下「東北大金研」という。)【所長 井上明久】との共同研究により、強磁性金属ナノ粒子を含むナノグラニュラー薄膜8)の絶縁層として、原子力機構で発見されたフラーレン(C60)3)とコバルト(Co) 9)の化合物(以下、C60-Co化合物10))を用いることで、従来からのナノグラニュラー薄膜の磁気抵抗(20%以下)を越える、これまでで最高レベルのトンネル磁気抵抗(TMR)効果(50-80%)が生じることを発見しました。
 TMR効果は、スピントロニクスデバイスの動作原理として注目されている現象であり、そこでの磁気抵抗の向上は実用化に向けての大きな課題でした。
 今回の成果は、これまで光学的や電子的な機能について注目されてきたフラーレン基材料が、スピントロニクス分野にも有用であることを初めて明らかにしたものであり、今後、磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)等、同分野への応用が期待されます。
 これは、原子力機構先端基礎研究センターの境誠司研究員、東北大金研・磁性材料学研究部門の薬師寺啓助手(現・産業技術総合研究所、研究員)らによるものです。
 本成果は米国物理学会の学術誌Applied Physics Letters誌の9月14日付電子版(第89巻11号)に掲載されました。


 フラーレン(C60)-コバルト(Co)化合物を含むナノグラニュラー薄膜に巨大な磁気抵抗効果を発見 −フラーレンのスピントロニクス分野への応用を拓く−(PDF、248kB)
 補足説明資料
 用語の説明

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