━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2010.6.25 ━━━━━━━━

■■■□□□ JAEAメールマガジン
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++---- No.132 目次 ----++

現場から ____ 実験中に崩壊して無くなってしまうような原子核の中性子反応断面積の測定に挑戦中(先端基礎研究センター)

海外事務所便り _ IEAとOECD/NEAが地球温暖化を抑制するためのロードマップを作成 ほか

プレス発表、お知らせ、採用情報、調達情報

あとがき

━ 現場から ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

実験中に崩壊して無くなってしまうような原子核の中性子反応断面積の測定に挑戦中−先端基礎研究センター

原子力開発の黎明期の1944年9月、米国ハンフォードに完成したばかりの原子炉が勝手に停止し、作業員が原因を調べていたところ数時間後に今度は勝手に再稼働し、その場に居合わせたFermiやWheelerといった大先生を大いに悩ませたことがありました。これは、後にFermiらの活躍によって解明された「キセノンの毒物効果」と呼ばれる現象で、原子炉の運転に伴って多種類の不安定な原子核が生成し、それらが崩壊して組成を変えながら一部の原子核(この場合は135Xe)が中性子を強く吸収することが原因でした。

このように、原子炉では自然界に存在しない多くの原子核が生成し、それが原子炉の特性に強く影響を与え、また核燃料の再処理や廃棄物処理処分に関係します。例えば高速炉サイクルにおけるキュリウムなど、ウランよりずっと重い原子核もその仲間です。今後、原子力の利用が高度化するにつれ、これらの原子核がどのくらい生成したかや、それらがどのくらい中性子と反応するかを高い精度で把握することが必要です。しかし、不安定な原子核に中性子を衝突させて反応特性を調べるのは非常に困難です。なぜなら実験に必要な時間の間に対象である原子核が崩壊して無くなってしまうこともあるからです。そこで、私たちは文部科学省の「原子力システム研究開発事業」から資金を得て、次世代高速炉開発で必要となる不安定な原子核の中性子反応断面積を間接的に測定する手法、すなわち「代理反応法」の研究開発を行っています。

この方法では、東海研究開発センター原子力科学研究所のタンデム加速器を用いて酸素などのイオンビームをアクチノイドの標的に照射して目的とする原子核を生成させ、その原子核の崩壊を測定します。標的として比較的安定な原子核を用いるため実験を遂行することができますが、放出される荷電粒子、核分裂生成物、ガンマ線、中性子など多種類の粒子を測定する必要があります。そのため実験グループ員がそれぞれの分担を決めて、これまで培ってきた重イオン実験技術を総動員します。また、測定の結果と中性子反応断面積を理論的に関連づける必要があるため、実験と理論の緊密な協力が不可欠です。これまでに、私たちのグループは、理論核物理と実験核物理の混成チームというメリットを生かし、代理反応法が成立する条件を理論的に求め、最適な実験条件や、代理反応法の妥当性検証に必要なパラメータを決定することができるようになりました。これだけでも先行する欧米グループを凌駕するものです。

代理反応法に係る研究の新たな展開としては、核分裂性核種を含む複雑な反応の初めから終わりまでを一貫して記述できるモデルの構築を進めています。これが完成すれば、核分裂生成物の分布や核分裂中性子の起源など、核分裂反応の根幹に関わる現象についての理解も大きく前進します。このように私たちは、核データ取得だけでなく、アクチノド領域原子核の構造と反応機構全般の理解も視野に入れています。さらに、代理反応法は同様な問題のある宇宙における元素の生成過程の研究に対しても有効な測定手法ですので、原子力を主目的とした基礎研究が多くの分野に貢献することを目指しつつこのテーマに挑戦しています。

(先端基礎研究センター 重原子核反応フロンティア研究グループ 千葉 敏)

━ 海外事務所便り ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

*当機構の海外事務所から寄せられたニュースを紹介します。

☆ ワシントン事務所
<NRC、ニューメキシコ州の濃縮工場に運転許可>
 NRCは6月10日、米国初の遠心法ウラン濃縮施設となる、URENCO社の子会社Louisiana Energy Service(LES)がニューメキシコ州Lea郡に建設したウラン濃縮工場の運転を許可しました。
 http://www.nrc.gov/reading-rm/doc-collections/news/2010/10-045.ii.html

<Lugar上院議員がエネルギー対策法案を提出>
 Lugar上院議員(共和党、インディアナ州選出)は6月9日、エネルギー対策関係法案「Practical Energy and Climate Plan Act of 2010」を提出しました。
 http://lugar.senate.gov/

☆ ウィーン事務所
<IAEA、PACTで新しいパートナーシップを発表>
 IAEAは、がん療法のための行動計画(PACT; IAEA's Programme of Action for Cancer Therapy)と胸部健康グローバルイニシアティブ(BHGI; Breast Health Global Initiative)で、新しいパートナーシップを発表しました。
 http://www.iaea.org/NewsCenter/News/2010/pactpartnership.html

<IAEA理事会、6月の審議を終了>
 IAEAは6月11日、5日間の日程で開いていた理事会を終了しました。理事会では原子力の技術協力や放射線、輸送及び廃棄物の安全性、IAEAの原子力科学技術と適用の強化、核の検証を検討しました。
 http://www.iaea.or.at/NewsCenter/News/2010/bog110610.html

☆ パリ事務所
<IEAとOECD/NEAが地球温暖化を抑制するためのロードマップを作成>
 OECD/NEAは6月16日、IEAと共同で地球温暖化を抑制するためのロードマップ報告書(原子力編)を作成しました。
 http://www.iea.org/papers/2010/nuclear_roadmap.pdf

<仏原子力安全局とエコロジー省が2010〜2012年度の「放射性廃棄物管理全国プラン」を発表>
 ASN(仏原子力安全局)とエコロジー省は6月4日、2010〜2012年度の「放射性廃棄物管理全国プラン」を発表しました。本 プランは、原子力発電、国防、研究・医療産業などが排出する放射性廃棄物の管理・貯蔵・処分の状況を、廃棄物の種別に報告したものです。
 http://www.asn.fr/index.php/S-informer/Actualites/2010/Plan-National-de-Gestion-des-Matieres-et-des-Dechets-Radioactifs

━ プレス発表 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

━ お知らせ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

━ 採用情報 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

*上記の詳細は http://www.jaea.go.jp/saiyou/index.html をご覧下さい。

━ 調達情報 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

━ あとがき ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

FIFAワールドカップ開幕から2週間が過ぎました。下馬評を覆す日本代表の健闘により、日本国内も試合時間中の水道使用量に変化が出るほど盛り上がっています。サッカーの推定視聴者は、オリンピックを超えると言われており、多くの国と地域の人たちが約一ヵ月間、サッカーの試合に夢中になります。

今朝の試合をご覧になって寝不足の方も多くおられるのではないでしょうか。国外で開催のワールドカップで初のベスト16、非常にうれしく思います。この調子で29日の試合も勝利してくれるよう応援したいと思います。(上)

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【配信希望、アドレス変更、配信停止】http://www.jaea.go.jp/14/14_0.html

【ご感想やご要望】http://www.jaea.go.jp/13/13_1form.shtml

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【発行】独立行政法人 日本原子力研究開発機構 広報部  佐田務、上野信行  ○

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