平成22年6月21日
独立行政法人 日本原子力研究開発機構
国立大学法人 群馬大学

小さながんも見逃さない新しいRI薬剤を開発
76Br-MBBGを用いて微小な褐色細胞腫のPETによる画像化に成功−

独立行政法人日本原子力研究開発機構(理事長:岡ア俊雄、以下、原子力機構)、及び国立大学法人群馬大学(学長:高田邦昭、以下、群馬大学)は、新たに開発したがんのPET診断用薬剤76Br-MBBG(メタブロモベンジルグアニジン)により、粟粒ほど微小な褐色細胞腫1)を画像上に鮮明に映し出すことに成功しました。76Br-MBBG2)をPET診断3)に用いれば、褐色細胞腫だけでなく神経芽細胞腫4)も検査することができるので、これらのがんの早期発見に威力を発揮し、早期治療による克服につながることが期待できます。

10%病あるいは5H病という別名を持つ褐色細胞腫は、副腎などで発生してエピネフリン(アドレナリン)5)などのホルモンを過剰に分泌させ、重篤な高血圧症を引き起こすがんです。このがんは早期に発見して治療すれば根治が見込めるのですが、これまでの検査法では微小ながん病巣を見つけ出すことが困難でした。

そこで、原子力機構量子ビーム応用研究部門RI医療応用研究グループ(渡邉茂樹任期付研究員、石岡典子グループリーダー)と群馬大学医学部(花岡宏史助教、遠藤啓吾教授)の研究チームでは、小さいがんの検出に威力を発揮するポジトロン断層撮像装置(PET)に着目しました。そして、原子力機構高崎量子応用研究所のイオン照射研究施設(TIARA)のイオンビームを利用して、PET用の放射性同位元素(RI)6)として期待が高い臭素-76(76Br)7)を使った新しいがんの診断薬を作り出す研究を進め、76Br-MBBGという薬剤を開発しました。褐色細胞腫にかかったマウスに76Br-MBBGを注射し、群馬大学医学部のPETでがんを見つけられるか調べたところ、わずか2 mmという粟粒ほどの微小ながんを鮮明に描き出すことに初めて成功し、開発した薬剤の効果を実証しました。

この研究成果は、2010年7月にRIを使った薬剤研究のトップジャーナルである、米国核医学会誌The Journal of Nuclear Medicineの電子版に掲載される予定です。

以上

参考部門・拠点:量子ビーム応用研究部門

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