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Ver.54 発行 2008.3.14  日本原子力研究開発機構 広報部

暖かな春の陽射しが眩しい季節、昼休みは村松海岸(茨城県東海村)まで続く松林の小道に咲く紅白梅の古木を眺めながら散歩をしています。出来るだけ頭を空っぽにして歩くこと30分余り、心と体はリフレッシュし、午後からの仕事に役立つアイデアが忽然と浮かぶことも効用のひとつです。

さて、ご存知の方も多いと思いますが、ケニア出身の環境保護活動家でノーベル平和賞受賞者のワンガリ・マータイ氏は、日本語「もったいない」が持つ固有の意味や概念に感銘を受けられ、「MOTTAINAI」を世界共通語にしようとする動きに繋がりました。

世界的に資源の獲得競争が激しくなるなか、エネルギー資源の安定確保と有効利用のため原子燃料サイクルの確立にむけた取組みは極めて重要ですが、これとともに、放射光や核融合の研究成果を応用して、私たちの暮らしに欠かせない自動車やハイテク機器材料に使われる希少金属の使用量を大幅に削減する技術の実用化に向けた取組みも始まっています。日本人の知恵や高い技術力は「もったいない」精神に因るところが大きいのかもしれません。

広報部次長 飯塚 幸治

さて、今回の「研究開発現場から」は、関西光科学研究所からです。

【研究開発現場から】 関西光科学研究所 河西 俊一

関西光科学研究所は、平成7年に設立された原子力機構の中でも新しい研究所です。関西光科学研究所では、量子ビーム応用研究の一環として、光量子や放射光といった新しい「光」の研究を行っています。光量子とは光がもつ粒子としての性質(量子性)を強く出すような状態の光をいい、量子ビーム応用研究部門が関西光科学研究所において、極めて強いレーザーやX線のような短波長のレーザーの開発やその利用研究を進めています。その光量子の研究は京都府木津川市の関西文化学術都市の一画で行っています。京都とはいっても、敷地境界の低い里山の向こうは奈良市です。

今回は詳しくは紹介いたしませんが、放射光を利用した研究は、兵庫県の西播磨地区の大型放射光施設SPring-8において展開しています。

光量子科学研究では、新しいレーザーの開発とその利用研究を行っています。

開発に成功した新しいレーザーは、小型でテラワット(TW:1012ワット)を超えるピーク出力を持つ高強度レーザー、そのような高強度レーザー光による物理過程を利用したX線レーザー、それと加速器技術を活用した自由電子レーザーの3つのレーザーです。

高強度レーザーは、平成14年度に、レーザー増幅媒質として固体結晶(チタンサファイア)を採用したシステムで、小型装置としては世界最高性能のピーク出力(0.85 ペタワット)を達成しました。また、X線レーザーの開発では、波長13.9ナノメートルで初めて空間的に完全コヒーレントなX線レーザーを実現しました。このような先進的なレーザーを実現させ、現在はこれらのレーザーとこの間培った利用技術を活用した利用研究を進めています。

高強度レーザーを物質に集光して照射するとその強い電場によって電子やイオンが発生し、加速されます。この高強度場による加速勾配は通常の高周波加速の1万倍以上の大きさになり、短い空間で高エネルギーに加速することができます。これは、加速器を小型化できるということを示しています。

関西地区において、平成19年10月に「光医療研究連携センター」が発足し、高強度レーザーによって陽子を発生し、それをがん治療(粒子線がん治療)に応用しようという研究を開始しました。この研究の目的は、現在大型の施設(100m×100mの大きさ)で行われている粒子線がん治療を、レーザーを使うことによってその施設の大きさを10の1以下にして、地域の中核クラスの病院でも可能なようにしようとするものです。これによって、優れたがん治療法だけども、施設が少ない、治療費が高いという「粒子線がん治療」を、広く普及させることに役立ちたいと考えています。

関西研では、平成20年度に敦賀地区へ「レーザー技術利用推進室」を設置し、量子ビーム応用研究部門、敦賀本部の方々と連携しながら原子力エネルギー開発分野でレーザー技術の応用展開を図りたいと考えています。はじめはよちよち歩きと思いますが、機構の各所のご協力を得て、ミッションを果たしていきたいと思っています。それによってレーザー技術の原子力分野における貢献を示していきたいと考えております。

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