平成20年3月4日
独立行政法人日本原子力研究開発機構
 
核融合研究に必要な中性子源用「トリチウムターゲット」の国内製作に成功
−国際熱核融合実験炉の実現に向け一歩前進−

 
 独立行政法人日本原子力研究開発機構(理事長 岡撫r雄、以下「原子力機構」という)の核融合研究開発部門核融合中性子工学研究グループとトリチウム工学研究グループは、東海研究開発センター原子力科学研究所のトリチウムプロセス研究施設を用いて、核融合研究に必要なFNS(Fusion Neutronics Source, 加速器型核融合中性子源)用トリチウム(三重水素)ターゲットの国内製作に成功した。

 FNSとは、加速した重水素をトリチウムターゲットに当てて核融合炉で生じる中性子を発生させる装置で、ここで得られる核融合炉の遮へい、低放射化材の開発及びトリチウム増殖ブランケットの研究等の成果は、那珂核融合研究所(茨城県那珂市)にある臨界プラズマ試験装置(JT-60)の改造、国際熱核融合実験炉(ITER)計画及び幅広いアプローチ活動(BA)に反映される予定である。

 銅製基板に蒸着させたチタン層にトリチウムを吸蔵させて製作されるトリチウムターゲットは、トリチウムの取扱施設と高度なノウハウを必要とすることから、フランスのメーカーが市場を独占しており、将来の安定確保に向けた見通しが不透明であった。
 また、価格や納期の観点からもトリチウムターゲットの国産化は不可欠であり、原子力機構では、国内で最大量のトリチウム取扱い施設であるトリチウムプロセス研究施設において独自に技術開発を進め、今回、国産技術として薄いチタン層に十分な量のトリチウムを吸蔵させる表面処理法を確立した。

 この技術を踏まえ、トリチウムプロセス研究施設に今回新設された吸蔵装置を用いて輸入品とほぼ同量(約400GBq、約1mg)のトリチウムを吸蔵させたターゲットを製作し、これをFNSで試験した結果、発生中性子量の時間変化・使用期間ともに、輸入品に勝ることを確認した。
 国産化に伴う調達コストの大幅削減と安定供給は、現在計画されているITER用各種機器の中性子環境試験やBA用材料の中性子照射効果研究開発等にも大いに資するものである。

 単色で高いエネルギーの中性子を比較的容易に得られるトリチウムターゲットは、核融合炉の研究開発のみならず、原子力の基礎研究(放射線計測機器の開発、核反応データ測定、校正用標準中性子場等)にも使用可能である。
 また、原子力以外の分野(鉱物資源探査、非破壊検査、放射線医療等)にも幅広く応用できるため、原子力機構では今後国内外に広く成果を展開していく予定である。
 なお、本成果は今年6月の核融合エネルギー連合講演会、9月の核融合炉工学に関する国際シンポジウム等で発表予定である。


 ・核融合研究に必要な中性子源用「トリチウムターゲット」の国内製作に成功 −国際熱核融合実験炉の実現に向け一歩前進−(PDF、136kバイト)
 ・補足説明資料(PDF、400kバイト)
 ・用語説明
以 上

参考部門・拠点:核融合研究開発部門


※発表内容に一部誤りがありましたので、平成20年4月17日に下記のとおり訂正させて頂きますと共に、深くお詫び申し上げます。

1.訂正内容

(1)プレス本文(全体の1ページ目)上から3〜5行目
  1. @訂正前:
       「核融合研究に必要なFNS(略)用トリチウム(略)ターゲットの国内製作に初めて成功した。」
  2. A訂正後:
       「核融合研究に必要なFNS(略)用トリチウム(略)ターゲットの国内製作に成功した。」
          →訂正点:「初めて」を削除
(2)補足説明資料1「今回の成果」(全体の4ページ目)上から1〜3行目
  1. @訂正前:
       「国内で初めて約400GBq(1mg)ものトリチウムを吸蔵したトリチウムターゲットの製作に成功」
  2. A訂正後:
       「約400GBq(1mg)ものトリチウムを吸蔵したトリチウムターゲットの製作に成功」
          →訂正点:「国内で初めて」を削除
(3)概要説明(全体の10ページ目)下から5〜6行目
  1. @訂正前:
       「国内で初めて約400GBq(1mg)ものトリチウムを吸蔵させたトリチウムターゲットの製作に成功」
  2. A訂正後:
       「約400GBq(1mg)ものトリチウムを吸蔵させたトリチウムターゲットの製作に成功」
          →訂正点:「国内で初めて」を削除

2.訂正理由:

プレス発表後、旧日本原子力事業株式会社(1989年に株式会社東芝と統合)が昭和40年からトリチウムターゲットの製造販売を行っていたことが分かりました(今から30年以上前に中止)。従って、「国内で初めて」の表現は誤りでした。

※今回原子力機構が製作したトリチウムターゲットは、チタンの表面処理に工夫を凝らし、より薄いチタン層により多くのトリチウムを吸蔵させることができる点が特長です。


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