第6回日米原子力研究開発協力シンポジウム(2023.02.24)

シンポジウムの様子をストリーミング再生でご覧いただけます。
個々の発表資料につきましては、下記のハイパーリンクからも御覧いただけます。

2023年2月24日に、原子力機構(JAEA)主催による「日米原子力研究開発協力シンポジウム」を米国ワシントンD.C.にて開催しました。

今年で6回目となる本シンポジウムは、新型コロナウイルス感染症の影響により、一昨年度のオンライン形式、昨年度のハイブリッド形式を経て、約3年半振りに現地対面形式での開催となりました。

米国側からは、共催機関であるエネルギー省(DOE)、原子力規制委員会(NRC)等政府関係者、国立研究所等の専門家、企業等原子力産業関係者、日本側からはJAEA役職員の他、政府関係者(在アメリカ合衆国日本国大使館(後援)、文部科学省、経済産業省等)、日本及びワシントン駐在の電力、メーカー等の関係者等、約100名が参加しました。

(左より、NRCハンソン委員長、DOEハフ原子力担当次官補、在米日本国大使館塚田特命全権公使、JAEA小口理事長)

冒頭挨拶として、小口正範理事長(英文略歴)から、気候変動とエネルギー安全保障の観点からの原子力の今日的意義、特に、再生可能エネルギーも含めたエネルギー全体の最適化を図る上での水素製造等の非発電利用等、原子力利用の新たな可能性を切り開くことの重要性を強調するとともに、原子力の価値を高めるための国際連携の重要性を述べました。日米の原子力コミュニティーの共通の関心事項についてさらなる協力の可能性を追求し、人的ネットワークを拡大することを目的として、2017年から本シンポジウムを開催しており、第6回となる本年は次世代革新炉と原子力安全研究に焦点を当てることを紹介し、参加者に謝意を示しました。

DOEハフ原子力担当次官補(英文略歴)から、昨年11月に東京で開催されたJAEA報告会へのビデオレターでの参加に引き続き、本シンポジウムに対面で出席する機会を得たことに謝意が表明されました。日米の原子力分野における強固で継続的な協力関係の重要性に触れ、ロシアのウクライナ侵攻の開始からこの日でちょうど1年を迎える今、原子力に関する「信頼できるパートナー」の重要性が改めて認識されていることが述べられました。日本が既存炉の再稼働や次世代革新炉の検討の点で、「原子力に戻ってきた」ことを喜ばしく感じていること、日米民生用原子力研究開発ワーキンググループ(CNWG)の下での軽水炉、次世代革新炉、燃料サイクル等の分野での研究所間の協力の重要性、こうした協力が研究開発のみならず次世代革新炉の導入につながることへの期待が表明され、本シンポジウムは原子力分野での日米協力の基盤(lynchpin)となるものであるとの見方が示されました。

在米日本国大使館塚田特命全権公使(英文略歴)から、本シンポジウムに参加するのは3回目であり、参加し続けている理由は同シンポジウムが有する価値にあることが述べられました。ロシアのプーチン大統領が新戦略兵器削減条約(New START Treaty)への参加の停止を表明したことを踏まえ、デービッド・サンガー氏がニューヨーク・タイムズ紙の最近の社説の中で、世界は軍拡・核兵器競争が頂点に達した半世紀前と似た状況にあると論じていることを紹介され、核リスクが拡大した今こそ日米原子力協力が日米関係強化のうえで重要であることを述べられました。

我が国においては、先日閣議決定された「GX(グリーン・トランスフォーメーション)の実現に向けた基本方針」により、既存の原子炉の再稼働の加速化、運転期間の延長、廃止措置の対象となる原子炉の次世代原子炉によるリプレース、研究開発の拡大が打ち出されたことにより、いわば「原子力の新時代」に入ったとの見方が示されるとともに、原子力に関する世論の変化(前週末の世論調査で原子力支持の世論が震災後初めて50%を超えたこと)、原子力への世論の支持を確保するための不可欠な要素としての「安全性」と「透明性」の重要性に言及されました。最後にALPS処理水の海洋放出が今年春から夏頃と見込まれていることに触れ、安全性と透明性が前提であること、米国の継続的な支援に対する謝意が述べられました。

JAEA小口理事長
DOEハフ原子力担当次官補
在米日本国大使館 塚田特命全権公使

基調講演では、NRCハンソン委員長(英文略歴)から、次世代革新炉の建設・運転に向けたNRCの取組みが紹介されました(以下要点)。

  • 世界中で次世代革新炉への関心が高まるという、非常にエキサイティングな状況を迎えている。NRCと規制関係者は原子力安全と核セキュリティを確保した上で、次世代革新炉の建設・運転がなされるための効率的な規制の実施に向けた準備に取り組んでいる。
  • 現在、原子力の世界では多くの技術開発や活動が行われており、とても一国では対処できないことから、国際連携が不可欠である。NRCとJAEA、原子力規制委員会(NRA)との強固な協力関係は、日米両国の原子力安全、ひいては世界の原子力安全を向上させてきた。
  • 先般、東京電力福島第一原子力発電所への訪問の機会があり、そこで働くスタッフの勇気と忍耐に感銘を受け、廃炉の過程で得られる知見の共有に関する日本のオープンな姿勢への敬意を新たにした。
  • NRCでは現在、カイロス社の「ヘルメス」とアビリーン・クリスチャン大学が計画している溶融塩研究炉の認可申請を審査しているところ。またテラパワー、Xエナジー、ウェスティングハウス等の企業との間では申請前段階でのインタラクション(pre-application engagement)が実施されており、こうした活動はスムーズで効率的な許認可審査に途を開くものとして重要と考える。その一方で、NRCは「技術中立的 (Technology-inclusive)」、「リスクを考慮した(Risk-informed)」、「事業者側の実績をベースとした(Performance-based)」、新しい原子炉の適用に関する規制の枠組み10CFR Part 53の策定に向けた検討を続けている。
  • JAEAとテラパワーとの協力は日本の高速炉の経験を共有するものであり、NRCの許認可レビューにもメリットをもたらす。
  • NRCでは小型モジュール炉(SMR)や次世代革新炉の海外への輸出の可能性も踏まえ、最近、輸出管理規制に関する包括的なレビューを実施。5つの炉型について輸出許可申請に応じる準備が出来ているとの結論を得た。
  • カナダ原子力安全委員会(CSNC)とのパイロット事業として設計の共同レビューを実施しており、こうした国際的な共同レビューが有効に機能するかについて知見が得られるものと期待している。
  • 次世代革新炉の導入には試験・研究活動が不可欠であり、NRCは米国の国立研究所、原子炉設計者、国際社会と協力しながら活動を続けている。世界の研究施設や研究能力の活用が不可欠であり、引き続き日本の知見を得ていきたい。

米国原子力エネルギー協会(NEI)コーテック上級副理事長(英文略歴)から、産業界を中心とする米国内外の原子力動向に対する見方が述べられました(以下要点)。

  • 次世代の原子力技術には途方もない可能性がある。
  • 米国においては、温室効果ガス削減が義務付けられているわけではないが、多くの電力会社は2050年までのネットゼロを自主的に誓約している(米国の電力顧客の内、83%が2050年のネットゼロを約束した電力会社から供給を受けている)。
  • 既存炉の運転延長(90%以上の原子炉が2回目の運転延長(60年→80年)を計画)と新たな原子力の導入(2050年までに米国で90GWの原子炉新設を検討)という2つの潮流が存在する。
  • 日本の最近の政策決定には非常に感銘を受けている。
  • 自分(コーテック上級副理事長)は、1980年代に液体金属冷却炉の日米協力プログラムに関与したことがキャリアのスタートであり、その後のさまざまな研究開発協力プログラムも含めて構築されてきた日米のパートナーシップが、次世代革新炉等の分野で日米両国が、中露両国への依存を排し、世界を牽引していく基礎をなすものである。
  • 次世代革新炉の導入に際して忘れてはいけないのは資金調達であり、日米両国は協力して低コストの資金調達システムを構築していく必要がある。
  • SMRであれ次世代革新炉であれ、技術を導入した後も、継続的な改善が必要となる。そのためには多目的試験炉(VTR)のような研究施設が重要である。

経済産業省資源エネルギー庁 小林国際資源エネルギー戦略統括調整官(英文略歴発表資料)から、日本の原子力政策の概要が紹介されました(以下要点)。

  • 日本は2050年までにカーボンニュートラルを実現することを目指しており、原子力に関しては、安全性を優先しつつ、既存炉の再稼働を進め、新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉の開発・建設に取り組む。
  • 2023年1月には経済産業省とDOEは、エネルギー安全保障とクリーンエネルギー・トランジションに向けた協力についての共同声明を発出した。同省は国際協力の下、SMR, 高速炉、高温ガス炉などの多様なタイプの炉の技術開発を支援する。
  • 日本政府はGX(グリーン・トランスフォーメーション)を加速するため、今後10年間で20兆円の国債を発行予定。
  • 東京電力福島第一原子力発電所事故後の安全性向上の取組みとして、柏崎刈羽原子力発電所6号機、7号機へのコリウムシールドの設置をはじめ、免震システム及び事故耐性燃料の開発を挙げることができる。

文部科学省 嶋崎研究開発戦略官(核燃料サイクル・廃止措置担当)(英文略歴発表資料)から、JAEAの活動も含めた日本の原子力研究開発や研究施設の廃止措置の現状が紹介されました(以下要点)。

  • 常陽については、2日前(2月22日)に原子炉設置許可変更のための原子力規制委員会によるすべての審査会合が終了し、すべての文書が同委員会に提出された。手続きが順調に進めば今年半ばには許可が得られる見通しである。耐震補強の後、2025年に再稼働し、高速中性子束による照射場を提供する予定である。運転再開すれば西側諸国で唯一の稼働する高速炉となる。
  • 固有の安全性を有する高温工学試験研究炉(HTTR)では、安全実証試験や水素製造実証試験が行われる予定である。
  • 次世代革新炉開発を促進するためには、高速中性子照射炉、新燃料製造施設、再処理実証フィールドといった一連の新しいインフラが必要であることが文部科学省により設置された有識者会議で議論されている。
  • その他
    • 新しいインフラや研究開発プロジェクトは、次世代革新炉のさらなる開発だけでなく、人材育成やこれまで培ってきた技術や技能の維持のためにも欠かせない。
    • 原子炉の研究開発だけでなく、燃料サイクル技術も重要である。
    • 新しい原子炉や研究施設の建設は成功の鍵であるが、財政的な困難と規制の要求を克服しなければならない。
    • 次世代革新炉に関する規制当局との対話は、ますます重要になってきている。
    • 同志国との国際的な連携も欠かせない。
NRCハンソン委員長
NEIコーテック上級副理事長
経済産業省資源エネルギー庁
小林国際資源エネルギー戦略統括調整官
文部科学省 嶋崎研究開発戦略官
(核燃料サイクル・廃止措置担当)

パネルディスカッション①「次世代革新炉の早期導入や非電力分野への活用を視野に入れた国立研究所の役割と日米研究開発協力」では、DOEカポニティ原子炉及び次世代革新炉導入担当次官補代理(英文略歴発表資料)から、今後の原子力研究開発の在り方について紹介されました。ネットゼロを達成するためには再生可能エネルギーとの統合を視野に入れて、原子力の新たな役割(熱利用、柔軟性等)を追求する必要があること、2050年までの200GWe(シナリオによって90GWe、400GWeなどの報告がある)の容量追加、そのための労働力の確保(2050年までに25万~30万の追加人員)が求められているとともに、官民の戦略的なパートナーシップ及びそれを支える国立研究所の役割(三重被覆燃料(TRISO)等先進燃料の開発、モデリング&シミュレーション、センサーと計測、先進材料・製造技術等)の重要性が述べられました。また、日米間の原子力協力の多層性の例として、大学主導の協力、研究所間の協力、先進技術の実証等に関する官民連携による協力が挙げられました。

NRCファステーノー規制研究部長(英文略歴発表資料)から、次世代革新炉に関する米国の規制の取組みについて紹介されました。次世代革新炉の導入という現在の動きはNRCにとっての挑戦であるが、挑戦に対応していく用意があり、そのための準備をしていくこと、その中で申請予定者との早期のインタラクション(事前の議論と課題評価)が非常に重要であることが言及されました。次世代革新炉に関する新たな規制枠組みとして10CFR53を策定中であることや、非発電利用(例:Xe-100による熱利用等)を含めたベンダーとの許認可前のインタラクションの状況、規制研究部の活動(コードの開発による規制支援等)、国研及びDOEとの協力が紹介されました。国研やDOEとの協力に関して、2018年に議会がNEICA(Nuclear Energy Innovation Capabilities Act)を制定した意図は、NRCが次世代革新炉導入の障害とならないように、NRCの独立性を損なわない範囲で知識と専門性、施設と人材の能力を共有するなど、国研やDOEとの協働を促進することであるという見方が示され、実際に良好な関係を築いていることが紹介されました。日米協力に関して、昨年11月に常陽、HTTR等大洗の施設を訪問し、感銘を受けたことを述べつつ、HTTRの運転や常陽の再稼働を通じてモデリングやシミュレーションコードの検証に必要なデータを取得することの重要性、OECD/NEAの共同プロジェクトである、HTTR を用いた冷却機能喪失時の安全性実証試験(OECD/NEA LOFCプロジェクト(NRCスタッフが運営委員会の議長であることも紹介))や照射試験フレームワークII(FIDES-II)/反応度挿入事故における高燃焼度試験(HERA)、東京電力福島第一原子力発電所事故情報の収集及び評価(FACE)といったマルチの国際協力などを通じて、JAEAとの協力を継続していくことに期待していることなどが強調されました。

アイダホ国立研究所(INL)ジーン副所長(原子力科学技術担当)(英文略歴発表資料)から、本シンポジウムの事前にも会合を行うなどJAEAとの協力を重視していることに言及しつつ、次世代革新炉の開発と導入に向けた国研としてのINLの取組みについて紹介されました。多数の官民協力、幅広い研究プログラム(先進材料製造技術(AMMT)、原子力科学ユーザー施設(NSUF)、先進的センサー・機器(ASI)、先進試験炉(ATR)、出力過渡試験炉(TREAT)、ホット燃料試験施設を利用した先進燃料キャンペーン(AFC)など)を通して民間部門の開発、実証に研究所の技術や能力を提供していることが述べられました。また、建設予定のマイクロリアクター(MARVEL)、国立原子炉イノベーションセンターの活動(EBR-IIのドームを利用したDOMEテストベッド、ゼロパワーフィジクス炉施設(臨界実験装置)を再利用したLotusテストベッドの設立、コストと市場への取組みなど)、統合エネルギーシステム(IES)研究施設などの説明がありました。また、INLとJAEAとの協力に関し、双方のユニークな施設を利用した相互補完的な既存の協力項目としてATR及びTREATでの照射試験、OECD/NEAのHERAプロジェクト、今後可能性がある新たなトピックとして常陽での試験等への言及がありました。

JAEA新型炉・高速炉研究開発部門 早船副部門長(英文略歴発表資料)から、JAEAにおける高速炉開発、常陽の許認可アプローチ(SIMMERコードの利用等)、常陽の照射試験能力、マイナーアクチナイド(MA燃料)の分離、燃焼を含むSmARTサイクルなどの取組みを紹介しました。日米協力については、特に照射済MOX燃料ピンのTREAT照射試験や日本機械学会(JSME)/米国機械学会(ASME)を通じたコードと標準の開発などの現行の日米協力を強調するとともに、将来可能性のある協力トピックとしてMA燃料製造と照射、先進燃料と材料の照射、金属燃料と炉心などのナトリウム冷却高速炉(SFR)開発研究、統合エネルギーシステムに係る研究、浮体式免震技術、3Dプリンティング技術などの原子力イノベーション研究に言及しました。また、常陽の利用方策として、溶融塩炉等、高速炉以外の炉型用の燃料等の照射も可能であることをアピールするとともに、高速炉開発を進めるうえでの被覆管等のサプライチェーン再構築等に関する協力の可能性に言及しました。

JAEA高温ガス炉プロジェクト推進室 佐藤次長(英文略歴発表資料)から、JAEAにおける高温ガス炉開発及びそれに関係する日米協力について紹介しました。JAEAが有する高温ガス炉の許認可取得経験や水素製造施設の接続計画を紹介するとともに、NRC及びINLとの現行の協力項目(HTTRデータを用いたシミュレーション手法、モデルの検証)及び今後可能性を有するNRCとの協力項目(高温ガス炉の安全標準と安全評価に関する技術討議)について言及しました。

モデレーターのバーンズ元NRC委員長(英文略歴)より、本パネルディスカッションの締めくくりとして、各パネリストのプレゼンテーションを通じた共通のキーワードとして、パートナーシップ、コラボレーション、レディネス、イノベーション、統合エネルギーシステム等が挙げられること、及び日米間の協力関係の継続と、国際社会における産業界や政府とのパートナーシップの重要性が強調されました。

DOEカポニティ次官補代理
NRCファステーノー規制研究部長
INLジーン副所長
JAEA早船副部門長
JAEA佐藤次長
バーンズ元NRC委員長

パネルディスカッション②「既存炉の長期運転における安全性向上に向けた研究開発における日米協力」では、Rempe and Associates, LLCのレンペ代表(英文略歴発表資料)から、2015年会計年度に開始された福島フォレンシックス(DOEが主導する日米専門家による東京電力福島第一原子力発電所事故の分析)の目的、参加機関(研究機関、産業界、大学、規制機関等)、成果物、本プロジェクトを踏まえた米国内でのシビアアクシデント対応等、安全向上のためのアクションが紹介されました。本プロジェクトの成果物は日米共同で東京電力に対して必要な情報を提示するもの(どのように入手すれば良いかの示唆も含む)となり、東京電力は今後の調査において活用していくというプロセスが紹介されました。

JAEA安全研究・防災支援部門安全研究センター 天谷副センター長(英文略歴発表資料)から、JAEAがNRAの技術支援機関として実施している安全研究の概要や、NRCとJAEAの間での協力覚書の下で研究協力が期待される分野及びその内容の例を紹介しました。具体的には、燃料安全分野におけるINLとのOECD/NEA FIDES-II/HERAプロジェクトでの協力、JAEAが有する施設と米国の国研が有する施設を利用した共同研究実施などへの期待について説明しました。

EPRIスウィリー副社長(既存原子炉担当)兼副CNO(英文略歴発表資料)から、EPRIの参加メンバー、注力している研究分野、米国における原子力発電炉の状況(稼働率、計画外停止、運転期間の延長の許認可等)について紹介されました。既存炉の寿命を80年に延長しないと2050年には稼働中の原子力発電炉の数はゼロに近づくことが指摘され、既存原子炉の長期運転の必要性が述べられました。また長期運転の許可が得られたとしても、経済的な理由により運転を停止するケースもあり得ることから、デジタル技術等、最新技術による最適化を通じた安全性・経済性の継続的改善が必要である旨が述べられました。

JAEA原子力科学研究部門 原子力基礎工学研究センター 燃料・材料工学ディビジョン 逢坂ディビジョン長(英文略歴発表資料)から、事業者等への貢献を目指した軽水炉システムの研究開発として、JAEAで進めている国内の事故耐性燃料開発の総括、長期運転に伴う圧力容器鋼の経年劣化評価等について紹介しました。事故耐性燃料の照射試験は、CNWGの下での共同研究契約として行われており、照射試験の成果は米国EPRI/DOE/INL主催による年次会合で報告・共有予定の旨説明しました。

ビデオメッセージ及びオンラインにて参加いただいた三菱重工業株式会社 原子力セグメント炉心・安全技術部 炉心・放射線技術課/安全設計技術課 村上主席技師(英文略歴発表資料)から、上記に関連して、同社で開発を進めているクロムコーティングジルカロイ事故耐性燃料について説明があり、INL/ATRで米国との協力のもと照射試験を行う予定であることが言及されました。

これら報告の後、本パネルディスカッションの締めくくりとして、モデレーターのメザーブ元NRC委員長(英文略歴)より、今回報告された内容は、今後原子力発電の安全性を一層向上するために必要なものであり、日米が緊密に協力して進めてきたことの重要性及びその中でお互いから多くのことを学んでいることが指摘されました。

Rempe and Associates, LLCレンペ代表
当機構天谷副センター長
EPRIスウィリー副社長兼副CNO
当機構逢坂ディビジョン長
メザーブ元NRC委員長

以上の議論を受け、アルゴンヌ国立研究所(ANL)ディックマン シニアポリシーフェロー(英文略歴)及びDOEペコ原子力担当シニアアドバイザー(英文略歴)から、それぞれ本シンポジウムを総括されました。ディックマン氏は、信頼できるパートナーを持つことの重要性、研究開発への投資や研究コミュニティーと規制当局との関係構築の必要性を指摘されました。また、コンピュータコードは重要だが、コードの検証のための試験データを収集する試験施設の確保がそれ以上に重要であること、その観点から、多くの関係者が常陽の再稼働を望んでいること、人材育成が原子力の発展のキーとなることが指摘されました。ペコ氏は、本シンポジウム全体を振り返りつつ、15年前の原子力ルネッサンスはその後勢いを失ったが、気候変動とエネルギー安全保障という2つの誘因を得て必然性をもって復活したこと、この1年に起きたことを踏まえた、信頼できるパートナーとして日米協力の継続、西側諸国で唯一の高速炉である常陽の重要性が指摘されました。

JAEA舟木健太郎理事(英文略歴 )から閉会挨拶として、シンポジウム開催にあたり御協力いただいた関係機関及びシンポジウム参加者へ感謝を述べるとともに、次世代革新炉と既存炉に係る研究開発の進展に向けて協力関係のさらなる強化の必要性、研究開発協力を進めることでの原子力技術の価値の増加及びその価値を国際社会や若い世代と共有することの重要性を指摘し、来年、さらなる成果を得て、ワシントンで再会することへの期待を述べ、本シンポジウムを閉会しました。

ANLディックマン シニアポリシーフェロー
DOEペコ シニアアドバイザー
当機構舟木理事

約3年半振りの現地対面形式での開催となりましたが、日米両国の原子力研究開発のキーパーソンの参加を得ることができ、日米両国の最近の動向を踏まえた中身の濃い議論が展開されました。JAEAは、今後とも、さまざまな機会を捉え、米国とのネットワーキングの拡大を図ってまいります。

シンポジウム会場の様子
司会を務める当機構中塚ワシントン事務所長