独立行政法人日本原子力研究開発機構/国立大学法人大阪大学/国立大学法人宮崎大学

平成25年11月1日
独立行政法人日本原子力研究開発機構
国立大学法人大阪大学
国立大学法人宮崎大学

紫外線が金属を透過することを確証
厚さ8ミリメートルの金属ナトリウムを透過した光による微小物体の撮像に成功

【発表のポイント】

独立行政法人日本原子力研究開発機構(理事長 松浦祥次郎、以下「原子力機構」という。)敦賀本部 レーザー共同研究所 大道博行所長、鈴木庸氏、同量子ビーム応用研究部門 河内哲哉研究主幹、同大洗研究開発センター 中桐俊男研究副主幹、国立大学法人大阪大学大学院工学研究科 福田武司教授、国立大学法人宮崎大学工学部 窪寺昌一教授、加来昌典助教の共同研究グループは、金属の一種であるナトリウム中を紫外線1)が透過することを、世界で初めて明らかにしました。

一般に金属は紫外線を吸収するため、紫外線が金属を透過する2)とは考えられていませんでした。実際、様々な金属に対する紫外線の透過率が調べられていますが、数ミリ厚の金属を紫外線が透過する報告はありません。一方、まだ十分に紫外線透過率が調べられていない金属もあり、そのひとつがナトリウムです。ナトリウムの透過特性の研究3)は1930年代に遡りますが、正確な実験データの取得ができませんでした。ナトリウムは空気中のごく僅かな水分と反応して性質が変わり4)、透過率が損なわれます。正確な透過率を測定するための試料の作成が極めて難しい点が理由の一つと考えられます。

今回、共同研究グループは、水分をほぼ完全に除去したナトリウム専用の実験施設を用い、フッ化マグネシウムという紫外線を通す特殊な窓材5)の間にナトリウムを挟み込むことで安定な試料の作製に成功し、その結果、真空紫外線と呼ばれる波長115-170ナノメートル(ナノメートルは100万分の1ミリメートル)の光が、厚さ1〜8ミリメートルの固体金属ナトリウムや温度150℃の液体金属ナトリウムを透過することを世界で初めて明らかにしました。さらに厚さ8ミリメートルのナトリウムの陰に隠れた物体の透視を行い、その像を明瞭に撮影することにも成功しました。

今回の研究結果は、従来の理論では考えられない高い紫外線透過率を示しており、基礎科学の観点から、金属の光学的性質に新たな理論的課題を提供するものと期待されます。また、技術的観点からは、光を一切通さないと考えられてきたナトリウムの中で起こる種々の現象が、紫外線により観測できる可能性を示したといえます。ナトリウムを使用する産業利用施設等における保守管理に必要なモニター装置開発につながる技術といえます。

本研究の成果は本年11月4日発行の米国光学会(Optical Society of America)のインターネット版速報誌Optics Express誌に掲載される予定です。

以上

参考部門・拠点:敦賀本部 レーザー共同研究所量子ビーム応用研究部門

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