平成22年3月26日
独立行政法人日本原子力研究開発機構

核融合炉ブランケットのトリチウム回収性能を世界で初めて実証
−ITER試験用ブランケットのトリチウム技術開発が大きく前進−

独立行政法人日本原子力研究開発機構(理事長 岡ア俊雄、以下「原子力機構」という。)核融合研究開発部門は、核融合炉のブランケット1)を模擬した構造体に高エネルギー中性子2)を照射し、核融合炉の燃料3)となるトリチウム4)の製造効率に関するデータを世界で初めて取得するとともに、トリチウム回収性能を実証することに世界で初めて成功しました。この成果により、核融合炉の燃料となるトリチウムガスを核融合炉で生産し、供給する自己供給技術の確立に向けて更に大きく前進したこととなります。

核融合炉ブランケットは、「熱を取り出し、電気にすること」「燃料トリチウムを自ら作り、取り出すこと」が求められる核融合炉発電の上で最重要機器の一つに挙げられております。そのため、現在、我が国を含むITER5)参加各極6)で、「核融合の燃料であるトリチウムを効率よく生成して、ブランケットの外に適切に取り出すことが出来るのか」を命題に技術開発競争が展開されておりました。

しかし、高エネルギー中性子を発生することができる設備が世界でも限られること、また最高900度に達するブランケット内のリチウム材料環境をつくり出すことができなかった等の理由により、高エネルギー中性子を用いたブランケットの照射実験を行うことはできておりませんでした。

そこで、原子力機構は核融合中性子源施設(Fusion Neutronics Source。以下「FNS7)」という。)を用いてヒーターと断熱材の配置を工夫し1,000度まで試料を加熱制御でき、実際の核融合炉ブランケットと同じ環境による高エネルギー中性子照射実験が可能な「ブランケット模擬容器」の製作に成功しました。さらに、照射した模擬容器中のリチウム材料を加熱しながらガスを流して、生成されたトリチウムガスを容器の外に取り出し測定した結果、トリチウムがほぼ100%回収できたことを確認しました。

このような照射技術や回収技術は、材料中のリチウム定量分析や炭素-14やフッ素-18等の医療用ラジオアイソトープなどを効率的に回収する技術への応用も期待されます。

本成果は、今年3月27日の原子力学会(水戸)、6月の核融合エネルギー連合講演会(高山)及び10月に韓国で開催されるIAEA核融合エネルギー国際会議で発表する予定です。なお、本研究は科学研究費補助金「特定領域研究:核融合炉実現を目指したトリチウム研究の新展開」の助成を受けて実施されました。

以上

参考部門・拠点:核融合研究開発部門

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