平成22年1月12日
独立行政法人日本原子力研究開発機構
新日鉄エンジニアリング株式会社

国際熱核融合実験炉(イーター)超伝導コイル用導体の製造を開始
−最先端技術の導入で高品質製造技術を世界に先駆け確立−

独立行政法人日本原子力研究開発機構(理事長 岡ア俊雄、以下「原子力機構1)」)と新日鉄エンジニアリング株式会社(代表取締役社長 羽矢 惇)は、国際熱核融合実験炉(イーター)(以下「イーター」)に使用する超伝導コイル2)用導体の製作契約に基づいて準備を進めてまいりましたが、このたび、最先端技術を結集した製造工場が福岡県北九州市若松区に完成し、超伝導導体の製造を開始します。これにより、日本の研究機関と産業界が協力し、超伝導技術で世界に先駆けて重要な一歩を記すとともに、イーター計画における調達活動の着実な進展を世界に示すこととなります。

イーター計画とは、日本、欧州、米国、ロシア、中国、韓国、インドの7極の協力により、フランスのカダラッシュにイーターを建設する国際研究開発プロジェクトです。イーターの開発により、環境への負荷が少なく、資源量、供給安定性、安全性等の面で優れ、人類の恒久的なエネルギー源として有力である核融合エネルギーの実現に近づくことが期待されています。

原子力機構は、我が国におけるイーター建設のための国内機関として、イーター機構3)と平成19年11月27日にトロイダル磁場コイル4)(以下「TFコイル」)用超伝導導体の調達取決め5)に署名し調達活動を開始しました。その一環として、平成20年3月に原子力機構は新日鉄エンジニアリング株式会社との間でイーターの装置の一部となるTFコイル用導体の製造に関する契約を締結、超伝導導体製造に向けた準備を進めてまいりました。TF導体はインドを除く6極が製造することになっていますが、他極に先駆けて、本日、直線長さ950mの建屋を有する最先端の導体製造工場が完成しました。導体は約1,000本の超伝導素線を撚(よ)り合せた撚(より)線(せん)をジャケットと呼ばれる金属製保護管に入れたものです。導体の製造を開始するには、超伝導素線及び撚線の製造技術、ジャケット製造技術、ジャケット溶接技術について、イーター機構の厳しい品質管理に基づく承認を得る必要があります。原子力機構と新日鉄エンジニアリング株式会社は、溶接技術において厚さ1.9mmの薄いジャケットの変形を0.1mm以下に抑える方法を開発し、また品質管理においても、レーザーを用いて、溶接による突起を0.1mm以下で検出する技術を確立すること等により、これらの課題を克服してきました。

今回、TFコイル用導体のうち、まず初めに模擬導体を製造することにより導体製造技術を実証し、3月頃から合計33本(約23km分)の実機導体製造を本格的に開始する予定です。

以上

参考部門・拠点:核融合研究開発部門

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