平成19年12月6日
独立行政法人日本原子力研究開発機構
 
世界最高レベルの収束度を持つ小型陽電子顕微鏡を開発
−原子力材料のミクロな劣化診断が可能に−

 
 独立行政法人日本原子力研究開発機構【理事長 岡撫r雄】(以下、原子力機構という)の前川雅樹研究員ら注)は、次世代原子炉の開発で課題となる材料劣化の新たな評価法として、陽電子マイクロビーム技術を開発してきました。当研究員らは、この技術を発展させ、陽電子線源として放射性同位元素(ナトリウム-22)を用いた世界最高レベルのビーム収束度(直径1.9μm)を持つ小型の走査型陽電子顕微鏡(1.5×1m2)の開発に成功しました。これにより、従来の顕微鏡手法では不可能な材料局部における原子レベルの劣化診断や微小材料の品質評価が可能になりました。

 この顕微鏡を用いて高温高圧水中で応力腐食割れ(亀裂)を生じたステンレス鋼を観察したところ、亀裂よりも先端部分において、光学顕微鏡では判別できない原子空孔が存在することを世界で初めて発見しました(概要説明の右図)。原子力機構は、今後、原子炉材料や燃料被覆材料の劣化診断への本技術の適用を計画しています。本技術は、原子力分野だけでなく、半導体デバイス開発や材料微細加工分野においても応用が期待されます。

 本研究成果は、旧電源開発促進対策特別会計法及びに特別会計に関する法律(エネルギー対策特別会計)に基づく文部科学省からの受託事業として原子力機構が実施した平成18年度及び平成19年度「陽電子マイクロビームによる原子力材料のミクロ劣化解析」の成果です。


    注)先端基礎研究センター 陽電子ビーム物性研究グループ(拠点:高崎量子応用研究所)


  ・世界最高レベルの収束度を持つ小型陽電子顕微鏡を開発 −原子力材料のミクロな劣化診断が可能に−
  ・補足説明
  ・用語説明


参考部門・拠点:先端基礎研究センター

以 上

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