平成18年8月8日
独立行政法人日本原子力研究開発機構
 
高度なセキュリティーで遠隔地からの核融合実験を実現
−ITER遠隔実験の実現へ向けて大きく前進−

 
 独立行政法人日本原子力研究開発機構(理事長 殿塚猷一、以下「原子力機構」と言う)は、高度なセキュリティーを保ちつつ遠隔地から臨界プラズマ試験装置(JT-60)の実験を行うシステムを開発し、京都大学からのJT-60実験を実施した。これは、遠隔地の研究者が大型の核融合実験装置を用いた実験をオンサイト研究者とほぼ同等な環境で実施できることを世界で初めて実証したものであり、国際熱核融合実験炉ITERの遠隔実験1)の実現に向けて大きく前進する成果となった。

 核融合研究では、実験装置の大型化・集約化に伴い、遠隔地の多数の研究者が大型装置の実験に参加する研究協力が推進されている2)。実験実施中は、実験条件の作成・変更、設備状態の確認等も迅速かつ頻繁に行い、リアルタイムで実験に反映させる必要があるが、従来、遠隔地から可能なのはTV会議を利用した議論への参加、計測器の操作3)及び実験データの取得のみであったため、実験実施には装置のあるオンサイトへの移動が必要でありその効率化が大きな課題となっていた。遠隔地からの実験実施には、大型装置を保護し安全な運転を担保する制御システム4)への不正侵入を防止するため、高度なセキュリティーの確保が必要であった。そこで、原子力機構のシステム計算科学センターがIT Based Laboratory (ITBL)5)計画において開発してきたグリッド・コンピューティング6)におけるセキュリティー技術を用い、核融合研究開発部門と同センターが共同で高度なセキュリティーの下で遠隔地からでも実験を実施できるシステムを開発した。

 本システムでは、遠隔地のパソコン等から遠隔実験用のサーバーへアクセスし、実験条件を作成する。その際、電子化された身分証明書を用いた個人認証や通信データの暗号化などにより実験条件の改ざんや制御システムへの不正侵入を防止し、通常の商用サイト等を凌駕する高度なセキュリティーを確保した。遠隔実験用のサーバーでは、実験条件作成等の機能をウェブ専用言語で記述し、高度なセキュリティーと応答の速い快適な作業環境を両立した。本システムとTV会議システム等を用いることより、世界中の研究者があたかもJT-60の制御室にいるかのように実験を実施することが可能となった。

 今回の成果は、国内共同研究重点化装置2)としてのJT-60の役割を高めるだけに留まらず、青森県の六ヶ所村に建設予定の国際核融合エネルギー研究センター内ITER遠隔実験センターから欧州に建設されるITERの遠隔実験を行うための技術基盤を実証したものである。


 ・高度なセキュリティーで遠隔地からの核融合実験を実現
 ・補足説明
 ・用語解説
以 上

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