平成18年4月25日
独立行政法人
日本原子力研究開発機構
 
植物が紫外線に強くなる新たな仕組みを発見
−植物は葉や茎の細胞内のDNA量を増やすことで紫外線に強くなれる−

 
 独立行政法人日本原子力研究開発機構(理事長 殿塚猷一、以下「原子力機構」)は、イオンビーム照射によって通常よりも紫外線に強くなった突然変異体を調べ、細胞核内のDNA量を増やすことが植物の紫外線耐性の重要なしくみであることを世界ではじめて明らかにしました。これは原子力機構量子ビーム応用研究部門量子ビーム遺伝子資源研究グループの長谷純宏研究員と田中淳バイオ応用技術研究ユニット長らの研究成果です。

 オゾン層の破壊による紫外線の増加が作物の生産に影響を及ぼすことが懸念されており、植物の紫外線に対する防御機構の解明は重要な課題となっています。植物が紫外線に強くなるためには、アントシアニンなどの紫外線を吸収する色素の量を増やすか、または紫外線によって傷ついたDNAを修復する能力を上げることが重要と考えられてきました。原子力機構では、高崎量子応用研究所イオン照射研究施設TIARAのイオンビームを用いて、通常よりも紫外線に強くなったシロイヌナズナの突然変異体を獲得していましたが、今回、その原因となる遺伝子を同定して機能を調べた結果、今まで知られていなかった仕組みによって紫外線に強くなっていることがわかりました。この突然変異体では、葉や茎の細胞核に存在するDNA量が増えること(核内倍加)により遺伝情報を持つDNAのスペアが増え、強い紫外線下でも傷つくDNAを補って生長を続け、通常より2倍以上生育が良くなります。

 この結果は、植物が紫外線に対して、どのように適応してきたかを理解する上で重要な手がかりを与えるとともに、シロイヌナズナだけでなく一般の植物でも、細胞核のDNA量を増やすことで、紫外線に対して強くすることができる可能性があり、ムギやダイズなどの作物増産や園芸植物の葉焼けの防止などに役立てることが期待できます。なお、この成果は英国雑誌「The Plant Journal」 の4月15日の印刷版(第46巻第2号)に掲載されました。


 ・植物が紫外線に強くなる新たな仕組みを発見 −植物は葉や茎の細胞内のDNA量を増やすことで紫外線に強くなれる−
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