平成18年3月15日
独立行政法人日本原子力研究開発機構
秋 田 県 立 大 学
 
イネに吸収されたカドミウムの動きを初めて観測
− 植物ポジトロンイメージング技術で生きたまま画像化を可能に −

 
 独立行政法人日本原子力研究開発機構(理事長 殿塚猷一、以下「原子力機構」)と秋田県立大学(学長 鈴木 昭憲)は、原子力機構が独自に開発した植物ポジトロンイメージング技術を用いることによって、イネに吸収された有害金属のカドミウムが根から茎や葉へ輸送される様子のその場での観測に初めて成功しました。これは原子力機構量子ビーム応用研究部門ポジトロンイメージング動態解析研究グループの松橋信平リーダー、藤巻秀研究員らと、秋田県立大学生物資源科学部茅野充男教授、中村進一助手らによる研究成果です。

 農作物に含まれるカドミウムを低減することは、食糧の安全確保のために解決しなければならない課題です。これまで、カドミウムが植物にどのように取り込まれ、植物の中をどのように動くのかを観測する方法がなかったため、課題の解決に向けた研究開発が十分に進んでいませんでした。原子力機構では、高崎量子応用研究所イオン照射研究施設TIARAのイオンビームを用いて植物の中の物質の動きを観測するための植物ポジトロンイメージング技術の開発を進めてきました。そこで今回、原子力機構と秋田県立大学は、本技術を利用し、さらにポジトロン(プラスの電荷を持った電子)を出すカドミウムの製造やその定量的な測定法を新しく開発することによって、世界で初めて植物に取り込まれたカドミウムの動きを生きたまま画像化することに成功しました。

 本研究開発により、植物によるカドミウムの吸収や輸送の過程、茎や穂への蓄積の様子の観測が可能となり、カドミウムがコメに蓄積しにくいイネ品種の開発のための迅速な選抜や、カドミウムの吸収抑制に最適な肥料や水の与え方などの栽培技術の改良に役立ちます。また、研究開発が進められている、有害な重金属で汚染された土壌を植物を使ってきれいにする技術への貢献も期待されます。本成果は、3月19日から筑波大学で開催される日本植物生理学会において発表する予定です。


 ・イネに吸収されたカドミウムの動きを初めて観測
 ・高崎量子応用研究所のイオン照射研究施設(TIARA)における植物ポジトロンイメージング研究の手順
 ・補足説明資料
 ・用語説明
以 上

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