使途特定寄附金

応援したい研究開発テーマや
研究者へのご支援

研究内容紹介

核燃料・バックエンド研究開発部門

~ 地質資料の年代測定法の技術開発 ~
東濃地科学センター 地層科学研究部 年代測定技術開発グループ

東濃地科学センターでは、高レベル放射性廃棄物の地層処分技術に関する研究開発として地震や火山等の自然現象の研究を実施しています。これらの自然現象は、地質処分の長期安全性に大きく関与することから、将来における発生の可能性や発生した際の影響度などを把握することが重要となります。そのため、過去の自然現象に対する調査技術の開発や、最先端の機器分析装置による年代測定技術の高度化に取り組んでいます。

年代測定においては、加速器質量分析装置やレーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析装置という国内でも数少ない貴重な装置等を使います。これらの装置を用い、これまで測定できなかった地質資料の年代を明らかにするとともに、新たな年代測定法の開発や手法の改良を行っています。現在、東濃地科学センターでは10を超える手法で年代測定が可能となっています。

これらの技術開発を進めるにあたり、みなさまからの貴重な寄附金を活用させていただきました。本研究は、地質処分のみならず、活断層や斜面災害といった防災分野にも貢献できることから、本研究の重要性をご理解いただき、今後ともご支援をたまわりますようお願い申し上げます。

原子力科学研究部門

~ 中性子によるGXへのチャレンジ、原子力基盤研究の推進 ~

中性子は高い物質透過能力を持つと同時に、水などの軽元素に対する感度が高い粒子です。また、中性子により誘発される原子核反応は元素や同位体に対して固有の物理現象です。近年、これらの性質を利用し、国内外のグリーントランスフォーメーション(GX)を進める上で不可欠な基礎データを取得できることを実証しました。例えば、NEDOプロジェクトの一環として、加速器施設J-PARCにおいて、車載用燃料電池セル内部で生成される水の挙動を世界で初めて可視化することに貢献しました。また、研究用原子炉JRR-3を用いたタ研究機関との共同研究において、全個体電池内のリチウムイオンの動きをリアルタイムで計測することに成功しました。頂いた寄附金は基礎基盤研究に活用させていただきました。貴重な寄附金を頂けたことに心より感謝しております。

当部門では、放射性廃棄物の再資源化、原子炉の安全性向上、RI製造、中性子/放射光利用に関わる基盤研究を柱として実施しております。例えば、医療用RIの一つである99mTcを国内で賄うために、既存施設を活用した製造方法についての概念検討を開始しました。これらは次世代のイノベーションを見据えた取り組みです。基礎基盤研究についてご理解を頂くと共に、一層のご支援を賜れますと幸いでございます。

福島研究開発部門 廃炉環境国際共同研究センター

~ 環境モニタリング調査技術の高度化開発 ~

環境中の放射線を計測し、その分布や傾向を解析する技術、また計測結果をマップなどに可視化したり、得られた情報を一般の方々にわかりやすく発信する技術は、除染の計画や効果の確認、避難指示の解除といった行政判断に加え、住民の方々に安心していただくうえで大切な技術です。廃炉環境国際共同研究センターでは、福島県の復興に貢献すべく、このような技術の開発・高度化を目指して研究を行っています。

計測技術としては、人の立入りが困難な環境でもモニタリングできるようドローンや無人の潜水機・観測船といった、様々なツールを用いた計測方法や検出器を開発しています。また機械学習などを活用した解析技術の高度化にも取り組んでいます。得られた測定結果などを公開するシステムを開発し、オンラインやサイネージシステムで情報発信することで、避難指示の解除の一助となることもできました。これからもこれらの技術を福島県の復興に活かしたく思っています。

頂いた寄付金は、このような技術開発に関わる費用として活用させていただいております。皆様からのご支援に心より感謝申し上げます。

原子力科学研究部門 原子力科学研究所 原子力基礎工学研究センター

~ 事故耐性FeCrAl-ODS合金の照射損傷評価技術開発 ~

東京電力福島第一原子力発電所事故で起きた炉心溶融や水素爆発は、燃料被覆管の母材であるジルカロイと高温水蒸気との化学反応で発生した莫大な反応熱と水素ガスに因るものです。そのため、母材を鉄ベースに変え、アルミナ表面被膜で水蒸気との接触を遮断したFeCrAl合金で酸化物粒子により分散強化(ODS)した事故耐性燃料(ATF)被覆管がオールジャパン体制で開発されています。

原子力基礎工学研究センターでは、FeCrAl-ODS合金の実機中性子照射による劣化を診断するための技術開発支援の一環として、イオン/電子によるシミュレーション照射技術と照射材の損傷評価技術から成るスマート照射技術を開発して参ります。これらの知見は、材料設計や照射損傷を総合的に評価するための計算機シミュレーション解析技術の検証(V&V)に適用され、これらを通してATF材料の実機中性子照射環境での劣化予測・診断システムを構築する計画です。

頂いた寄附金は、ATF材料であるFeCrAl-ODS合金のイオン照射試験前の微細組織を把握するため、高分解能TEMによるナノスケール微細組織解析費用として活用させていただきました。このような貴重な御寄附を頂いたことに感謝申し上げます。

高速炉・新型炉研究開発部門 大洗研究所 高温ガス炉研究開発センター

~ 原子力を用いた水素製造技術の研究開発 ~

「高温ガス炉」は、炉心が溶融し難いなど優れた安全性を有する次世代の原子炉で、高温を活かした高効率発電・水素製造・熱や蒸気の産業利用によりカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする)実現への貢献が可能です。

当センターでは、高温工学試験研究炉 (HTTR)を用いて、高温ガス炉の基盤技術を開発・実証するとともに、異常状態を模擬した試験を通じてその安全性を実証してきました。HTTRは2011年以降運転を停止していましたが、国が新たに定めた新規制基準の下、2021年夏に運転を再開しています。今後、水素製造設備を接続し、高温ガス炉と水素製造施設の高い安全性を実現する接続技術(原子炉から水素製造に必要なエネルギーを供給)を確立する計画です。

これと並行し、カーボンフリー(二酸化炭素等を排出しない)水素製造技術として、高温ガス炉の高温熱で硫黄とヨウ素を用いた化学反応を駆動して水を分解する熱化学水素製造法ISプロセスについて、プロセスの運転制御技術や水素製造効率向上技術の研究開発に取り組んでいます。

頂いた寄附金は、カーボンフリー水素製造技術の研究開発のために活用しております。

核燃料・バックエンド研究開発部門

~ ウラン廃棄物の処理技術開発 ~

人形峠環境技術センターでは、核燃料施設の廃止措置を着実に進めるため、ウラン廃棄物を安全に処理・処分するための研究開発を実施しています。

核燃料物質を取り扱った大型施設の解体及び解体物の除染、減容は国内で初めてであり、ウラン濃縮施設では、遠心分離機内に付着している放射性物質を除去し、金属を再利用していくための除染や切断等による解体の技術開発を行っています。遠心分離機を分解した後、処理設備にて希硫酸と超音波洗浄装置を用いてクリアランスレベル(人の健康への影響を無視できる放射性物質の濃度)まで除染して、金属の再利用とともにウラン廃棄物の発生量の減少を目指しています。

これらの技術開発を進めるに当たり、皆さまからの貴重な寄附金を活用させていただきました。

核燃料施設の廃止措置を安全最優先に業務を進め、地域の方々に安心をしていただけるよう、今後とも御支援を賜りますようお願い申し上げます。


安全研究・防災支援部門

~ 原子炉圧力容器鋼の破壊試験に対する解析 ~

安全研究センターでは、安全上重要な機器である原子炉圧力容器の構造健全性評価に関する研究の一環として、試験片や亀裂の寸法等の違いに影響されない破壊評価手法の整備を進めています。本研究では、日本溶接協会CAF小委員会※で評価が進められている大型試験体に対する破壊評価試験を対象に、小型試験片で求められたパラメータを当センターが整備した手法に適用し、破壊評価が可能かを確認することとしており、本年度は解析による荷重や変形の再現性を確認しました。

写真のご提供:日本溶接協会CAF小委員会
http://www.jwes.or.jp/mt/kenkyu/ae/archives/01/

今後、破壊評価手法の適用性を確認しつつ、本手法の精度向上を図って参ります。皆さまからの貴重なご寄附に心から感謝の意を表します。

※塑性拘束効果を考慮した破壊評価基準の確立に向けた検討を実施中(研究機関は2018年~2023年の予定)

J-PARCセンター

~ 自動化・遠隔制御等の測定高度化開発 ~

J-PARCセンターでは、これまで10年間の施設運用経験知見を反映させて、ユーザー、スタッフの実験時の負担軽減と利便性向上を目的として、自動化・遠隔制御等の測定高度化開発を進めています。

例えば、中性子利用実験用機器の温度制御や試料交換等において、外部遠隔地からのスマートフォンによる制御を可能とする試料交換機等の開発に着手しています。この研究開発を進めることで、外部ユーザーは時間・場所に関係なく中性子利用実験が可能となり、負担軽減と利便性向上が図れます。これらの研究開発機器整備に寄附金を活用させていただきました。

このような研究開発の機会を与えていただいた寄附者の皆様に、大変感謝しております。

J-PARCセンター

~ MLFにおける実験装置先進運転 ~

物質・生命科学実験施設(MLF)では、ほぼ光速(光速の97.12%)まで加速した陽子を炭素、水銀の標的に衝突させることで、それぞれミュオン、中性子のビームを作り出しています。これらのビームは、世界最大級の明るさで試料内部を照らし原子や分子の居場所や動きを観察できる「マルチドローン」として、科学の発展のための基礎研究から材料開発などの応用研究まで、幅広い分野の研究に用いられています。

物質・生命科学実験施設は、物質測定プローブとしての中性子、ミュオンの特徴を生かした、超伝導物質、熱電材料等の機能性材料の機能解明のような最先端物質科学、タンパク質結晶構造解析のような生命科学、高性能タイヤ開発、全固体電池・Li電池・燃料電池開発のような産業利用の他、核変換技術の基盤となるマイナーアクチナイド中性子捕獲断面積測定等の原子力開発研究のみならず、中性子その物を対象とした基礎物理研究等の広範な研究に利用されています。これらの先進利用のための施設安定運転に寄附金を活用させていただきました。このような研究開発の機会を与えていただいた寄附者の皆様に、大変感謝しております。