原子力機構メールマガジンをご愛読頂きありがとうございます。
10月26日(日)は、「原子力の日」です。「原子力の日」は、我が国が国際原子力機関(IAEA)への加盟を決定した日であり、我が国で初めて原子力による発電に成功した日(昭和38年、動力試験炉JPDRの発電成功)であることから、昭和39年に設けられたものです。
11月5日(水)には、有楽町朝日ホールにおいて13時30分より「未来につなぐ原子力」と題して第3回原子力機構報告会を開催いたします。皆様のご来場をお待ち申し上げます。原子力機構の研究開発成果や研究開発の状況をご報告申し上げます。特別講演には、独自の経営感覚とご自身の経験から、さまざまな経営者プログラムの講師として多方面でご活躍されている株式会社東レ経営研究所 代表取締役社長 佐々木常夫先生をお招きいたしました。お申込は下記、ホームページからお願いいたします。
http://www.jaea.go.jp/02/info/jaea-houkoku3/top.html
広報部広報課 上野信行
今回の「研究開発現場から」は、原子力機構報告会でもご報告する量子ビーム応用研究部門です。
水素を燃料とする燃料電池は、発電効率が高く、二酸化炭素排出が大幅に削減できるため、地球温暖化抑制の有力な手段として期待されています。このため、当研究グループでは、電子線、γ線、イオンビームによる放射線グラフト重合と架橋技術を駆使して、家庭用や自動車用の水素燃料電池に適用できる高性能電解質膜の研究開発を進めています。
放射線グラフト重合は、放射線で高分子の結合が切れて生成するラジカル(活性点)に機能性を持つ別の分子を接ぎ木(グラフト)して、新しい機能を付与したり、特性を改良する技術です。この技術により、元々絶縁性の高分子膜に導電性を持たせることができます。また、放射線架橋はラジカル間の反応で高分子同士をつなげる技術で、高分子膜の機械強度や耐熱性を向上させることが可能です。これらの技術を携帯機器向けの直接メタノール型燃料電池用電解質膜の開発に応用し、優れた燃料バリア性を有する電解質膜を実現して技術移転を行いました。
この研究を更に発展させ、耐熱性や機械強度に優れた芳香族炭化水素高分子に着目し、これを基材として、高い耐久性が要求される家庭用水素燃料電池の電解質膜開発を進めました。導電性付与のため、熱グラフト重合と放射線グラフト重合を組合せた熱・放射線2段グラフト重合技術を創出して適用した結果、高い導電性と耐久性を併せ持つ電解質膜の開発に成功しました。開発した電解質膜は従来膜と比べ導電性が1.5倍、強度が2.3倍向上しており、これを燃料電池セルに組み込んで発電試験を行った結果、家庭用燃料電池に求められる80℃で4万時間以上の安定運転が実証できました。
今後は、産業界と密接に連携し、家庭用燃料電池電解質膜の実用化に向けた研究開発を推進する計画です。また、更に厳しい性能が要求される自動車用燃料電池電解質膜の実現を目指し、中性子超小角散乱、陽電子消滅等を活用して、電解質膜のナノ〜ミクロスケールの構造を解明するとともに、イオンビームによるナノレベルでの構造制御技術を開発して、高温・低湿度条件でもほとんど劣化しない高性能電解質膜の開発を進めていきます。
量子ビーム応用研究部門のホームページ http://www.jaea.go.jp/04/qubs/index.html
■申し込みいただいた皆様に独立行政法人日本原子力研究開発機構の情報を配信しております。
■アドレス変更・配信停止については、以下のホームページをご覧ください。
http://www.jaea.go.jp/14/14_0.html
【編集・発行】独立行政法人日本原子力研究開発機構 広報部広報課
http://www.jaea.go.jp/
【お問い合わせ】お問い合わせフォームより → http://www.jaea.go.jp/13/13_1form.shtml
原子力機構ホームページ、メルマガへのご意見、ご質問、お問い合わせなど皆様の声をお寄せください。