日本原子力研究開発機構

原子力安全・防災研究所原子力緊急時支援・研修センター

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緊急時対応研究

原子力防災に関する調査研究

 緊急時対応研究グループは、オフサイトでの緊急時対応に関する研究を幅広く行っています。ここでは、その一例について紹介します。
 原子力災害時の避難退域時検査では、多数の車両及び避難住民等の検査を行うことが想定されています。現在は、車両の指定箇所をタイヤとワイパー部とし、要員によるGM管式サーベイメータ等の表面汚染測定器で検査することを基本としていますが、効率的な避難退域時検査を実施するため、車両検査では可搬型の車両用ゲート型モニタの活用が計画されています。
 当グループでは、車両用ゲート型モニタの活用のための基礎データを取得することを目的に、車両用ゲート型モニタの性能調査試験を実施しました。

避難退域時検査の概要

 本試験では、避難退域時検査における簡易除染の判断基準であるOIL4相当の汚染を模擬した密封線源を車両のタイヤとワイパー部に取り付け、実際の検査を模擬した走行試験にて車両用ゲート型モニタによるγ線の計数率を測定しました。車両用ゲート型モニタは(株)千代田テクノル製のガンマ・ポールを使用しました。
 車両用ゲート型モニタによるタイヤとワイパー部の同時測定により、検査の迅速化に期待できることが過去の試験から分かっています*1。同時測定実現のため、タイヤ、ワイパー部、それぞれに対し高い検出効率を得るため検出器の配置方法をシミュレーション計算で検討し*2、横置きと縦置きにそれぞれ配置する新たな配置方法にて車両走行試験を行いました*3

同時検査のための検出器の新たな配置方法

 その結果、同時検査に必要となる汚染の弁別性能が、タイヤで100%、ワイパー部で80%確保できることを確認しました。今後も引き続き、タイヤとワイパー部の2箇所の同時汚染検査を迅速に行う方法等、車両用ゲート型モニタを用いた測定方法と運用方法を検討し、実効性のある避難退域時検査方法の開発を進める計画です。

*1:平岡他、”原子力災害時の車両汚染検査におけるゲート型モニタ活用に向けた性能調査試験(受託研究),JAEA-Technology 2022-003(2022).
*2:川崎他、“原子力災害時における車両汚染検査の最適化手法の研究 (2)可搬型車両用ゲート型モニタの新たな配置方法の有用性の基礎的検討”, 日本原子力学会2023秋の大会予稿集(2023).
*3:平岡他、“原子力災害時における車両汚染検査の最適化手法の研究 (3)可搬型車両用ゲート型モニタの新たな配置方法による汚染弁別性能の検証”, 日本原子力学会2023秋の大会予稿集(2023).

原子力災害での緊急時対応に関する実習

 国、地方公共団体、関係機関では、福島第一原子力発電所事故の教訓も踏まえ、緊急時対応の整備が進められています。本実習は、学生(高専生、大学生、大学院生)を対象に4、国や地方公共団体、関係機関の役割、住民への防護措置等について理解を深めることを目的としたものです。本実習生は、以下の実習プログラムに沿って、原子力防災について幅広く学ぶとともに、新たな緊急時対応の整備に必要な課題に取り組みます。

①(基礎編)原子力防災の理解
 わが国や国際的な原子力災害時の体制・対応、NEATにおける緊急時対応や調査・研究等について、講義を通じて理解を深める。

②(応用編)緊急時対応に関する実習
 ①の内容を踏まえて情報取集等を行い、新たな緊急時対応整備に向けた調査・検討を行う。個別テーマを選択し、課題に取り組む。

③ 実習成果のまとめ
 ②の個別テーマ実習の成果をまとめ、成果発表会にて発表を行う。

例:R6年募集テーマ
(1)原子力災害時における汚染検査要員の負担軽減策の提案
原子力災害時には避難住民の汚染検査を実施することが計画されている。避難時には多数の住民が汚染検査を受けることが想定されるため、適切な検査を長時間維持するには検査要員の負担を減らすことが重要である。ここでは、検査中における検査要員の疲労の程度を想定し、検査員の負担軽減策を検討する。

(2)原子力災害時における対応のための訓練シナリオの検討
原子力災害時において緊急時対応要員は緊急時モニタリングで得られた情報に基づき、現在の状況を把握して今後の対応を検討する必要がある。そのため、平常時における机上訓練は不可欠である。ここでは、緊急時モニタリングの実施方法及び大気拡散計算手法を学んだ上で、仮想的な事故に基づく訓練シナリオを検討する。

*4:JAEAホームページ 学生インターン
 https://www.jaea.go.jp/saiyou/internship/

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