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高速炉・新型炉研究開発部門について

部門長挨拶

高速炉・新型炉研究開発部門長

大島 宏之

高速炉・新型炉研究開発部門は、温室効果ガス排出削減やエネルギー安全保障の確保に貢献すべく、高速炉/高温ガス炉等の新型炉及び燃料サイクル技術の研究開発に取り組んでいます。

エネルギーはあらゆる産業の基盤であり、「安定且つ安価に」供給できることが国民経済の維持・発展には不可欠です。温室効果ガス排出削減に向けて主要国が削減目標を国際公約として掲げ、CO2を排出しない非化石エネルギーへのシフトを進めようとしていますが、再生可能エネルギーはその特質(気候や季節で変動、出力密度が低く大きな設置面積が必要など)から導入には限界があり、原子力発電と組み合わせることにより、電気代の高騰を抑えて大幅な脱炭素化が可能となります。現在、安価で脱炭素化といえる水準まで低炭素化された電力システムを実現しているのは、スウェーデンやフランスなど、水力などの安定再生可能エネルギーや原子力を主軸としている国のみです。新型炉システムの開発・社会実装では、再生可能エネルギーとの効率的・効果的な共存性が1つのポイントとなります。また、安全確保は大前提であり、物質が持つ固有の性質を利用し故障や失敗が事故に至らないしくみ(固有安全)や外部電源が無くても自然の力だけで働く安全機能(受動安全)を適切に取り入れた堅牢なシステムであることが必須です。

温室効果ガス排出削減には、CO2を放出しない発電システムに置き換えることに加え、陸海空の人と物の輸送や製鉄・製紙などの産業分野においても、非化石エネルギーに置き換える対策が必要となります。その1つの方法が水素エネルギーの利用です。当部門が研究開発を進めている高温ガス炉から取り出される950℃の高温の熱によって、温室効果ガスを排出せずに水素を製造することが可能となります。また高温の熱は、高効率発電や、海水淡水化や地域熱源など発電以外の様々な分野での熱需要に対応することができます。

資源の乏しい日本においては、長期にわたるエネルギー安全保障の確保も大きな課題です。高速炉サイクル技術は、原子燃料をいわゆる「リサイクル」する技術であり、ウラン資源の利用効率を飛躍的に高めることができます。これは自国の技術で国内で資源を生み出すことを意味し、長期にわたって(千年オーダー)エネルギー安全保障の確保を可能とします。(国民生活の基盤を海外に依存する危うさは、2021年初頭の電力市場価格の大幅な高騰やコロナワクチン問題でも表面化しています。)また、高速炉サイクル技術は、半減期の長い高レベル放射性廃棄物となる核種(マイナーアクチニド)の燃焼も可能であり、廃棄物の大幅な減容や、数万年以上かかる放射能減衰期間を数百年に短縮することができます。原子力発電の廃棄物問題に対しても有効な技術です。

多目的利用の1つとして、医療用放射線同位元素(RI)の製造についても研究開発を進めています。RIはガンの検査や治療に用いられていますが、その供給の大半は輸入によるもので常に国際情勢に影響されます。最新治療法確立に必要なRIの入手が困難な状況も見受けられます。国際的にも貴重な当部門の高速中性子照射場を有効に活用し、RIの国産化にも寄与することが期待されています。

カーボンニュートラルの実現、長期にわたるエネルギー安定供給、国民福祉の向上に資するため、安全確保を大前提として、新型炉及び燃料サイクル技術の社会実装に向けた研究開発を着実に進めてまいります。

高速炉・新型炉研究開発部門について