研究内容紹介

地層科学研究について

地質構造や地下水の動き、岩盤の性質などを明らかにするための 総合的な研究分野です。また、調査技術の開発や、地震や活断層などに関する研究も同時に行います。

地層科学研究は、大きく以下の3つに分けられます。

地質環境調査技術開発

地上から行う調査研究や地下での調査により、表層から地下深部までの信頼性の高いデータを体系的に取得し、地上から地下深部までの地質環境が調査・把握できることを具体的に示します。

また、地下施設建設による地質環境の変化の予測解析を行い、これを研究の第2段階で得られる実測データを用いて確認します。これらにより、一連の調査研究で用いた調査機器や、モデル化手法を含めた体系的な地質環境調査技術を確立します。

さらに、地下水や岩盤の変化を観察する機器を開発・設置し、地質環境の変化を調べる技術を開発します。長期間、リアルタイムにデータを取得できるようなシステムの開発も行います。

■岩盤の水理調査
第1段階で掘削したボーリング孔での間隙水圧観測を継続するとともに、地下施設などを利用した坑道周辺岩盤の透水性や坑道内への湧水量などに関する調査を行います。また、これらの調査から得られる観測結果に基づいて、第1段階で予測した水理地質構造モデルの検証を行います。

第1段階で掘削した
ボーリング孔での間隙水圧観測

■試錐(ボーリング)調査
地下深くに試錐(ボーリング)孔と呼ばれる穴を掘り、そこで採取されるコアを用いた室内試験や掘削途中および掘削終了後の試錐孔を利用した試験により、地層の性質や地下水の流れ方、岩石の強さ、地下水の性質などに関するデータを取得します。

坑道内での
ボーリング調査の様子

■坑道での地質調査
地表からの調査結果に基づいて構築した地質構造モデルの妥当性確認と更新を目的として、地下施設(坑道)から、地層や割れ目の分布・連続性を三次元的に把握するため、坑道壁面における地質観察を実施します。

坑道での壁面観察の様子

■地質環境モデルの構築
地表からの調査で得られたデータに基づき、地層や地下水の状況を表す地質環境モデル(地質構造モデル、地下水の水理モデル、地下水の地球化学モデル、岩盤力学モデル)を構築します。調査の進展によりデータ数が増えるに従って、それぞれのモデルの更新、改良を逐次行います。それと合わせてモデルに含まれる不確実な部分の低減の度合いについて検討することにより、地質環境のモデル化に必要な地質環境データ項目、量、精度などについて明らかにし、地表からの体系的な調査手法、地質環境のモデル化手法を確立します。
 また、地下施設建設に伴う地下水の水圧・水質などの地質環境の変化の予測結果と、地下からの調査で取得した地質環境データを比較することにより、予測手法の妥当性を確認します。これにより地上からの調査・予測・解析手法の妥当性を確認します。

第1段階の調査結果に基づき構築した地質構造モデル

■調査技術・調査機器開発
幌延深地層研究センターにおける調査研究は、既存の調査技術、調査機器を活用して実施することを基本とし、軟らかくて崩れやすく、膨潤する性質を持つ堆積岩、石油やガスが存在する地層、深度500m程度の地層に加わる大きな圧力などの条件に対応するために必要な、掘削・調査技術開発を行います。
 これまでに原子力機構が実施してきた坑道内での調査研究(東濃鉱山における試験研究など)を通じて開発した水理試験装置などの調査技術・調査機器を適用し、その有効性を確認します。

光ファイバー式地中変位計
設置の様子

光ファイバー式地中変位計

■試錐(ボーリング)孔を用いたモニタリング技術開発
地下深いところの地下水の水圧や水質の長期的な変化をモニタリングするには、機器の長期的な耐久性などが重要となります。
 このため、モニタリング機器の材質、仕様などを開発・改良し、掘削した試錐孔に順次設置し、データ取得を開始し、初期データおよび、その経時変化の把握や、地下施設建設が地下水の水圧・水質に与える影響を観察する技術の整備等を行います。

地下水の水圧・水質
モニタリング装置の開発

深地層における工学的技術の基礎の開発

地下空間の開発利用に必要な技術として、地下施設の建設が地質環境に与える影響を明らかにするための試験研究や、坑道掘削による岩盤への影響の修復技術の検証のための試験などの基本計画を策定します。

さらに、地下の深いところで遭遇する様々な現象を考慮した坑道の安全確保、坑内環境の維持のために必要となる対策工(支保工の選定)など、施工管理方法を検討します。

■地下施設建設に関わる坑道の安定性評価

地中変位計やコンクリート応力計などの計測機器により取得したデータを用いて、地下施設設計の妥当性の検証を行います。
 また、設置した地震計による観測データの解析による地下施設の耐震性評価技術の整備を進めます。

支保の健全性を監視するための計測機器

地表と地下の地震時の加速度の波形の比較
平成23年8月12日に北海道北部で発生したマグニチュード3.9の地震で観測された加速度の波形

地質環境の長期安定性に関する研究

地震・断層活動、隆起・沈降、気候・海水準変動、火山・火成活動などの研究や地殻変動に関する観測を行い、将来における地質環境の変化の予測技術を確立し、地質環境の長期安定性に関する評価手法の信頼性を向上させていきます。

■地質環境の長期的変遷に関する研究

断層活動や海水準変動などの天然現象の履歴に関する調査手法と地下水流動などに関する調査・解析手法とを組み合わせて、将来の天然現象に伴う地質環境の変化を予測する手法の検討を行います。
 地形や地層の変形と古環境の変遷を把握するための地形・地質調査と数値標高データを用いた地形解析、および地表に露出している地層と坑道から採取する岩石サンプルの分析や鉱物試験を行います。
 また、地形・地質構造の変遷や気候変動に伴って変化すると考えられる地下水の流れを解析する手法の整備を進めます。

地形・地質構造の変遷や気候変動を踏まえた地下水の流れ・塩分濃度分布の変化に関する解析例

■地震研究

地震計(速度計、加速度計)の設置・観測による地震動データの取得・蓄積を行い、北海道北部地域の地震活動の特徴やその断層などとの関係を把握するとともに、試錐(ボーリング)孔を用いた地下水のモニタリングデータと合わせて、地震が地下水に与える影響の評価を行います。
 また、取得した地震動データと、地表および地下施設で取得する地質環境データを組み合わせ、地震が地質環境に与える影響について検討します。

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