あとがき


き 


 原子力委員会が昭和38(1963)年、わが国の開発する国産動力炉の一つを「天然ウラン或いは微濃縮ウランを使用する重水炉」に決定してから40年を経過した今日、ここに新型転換炉「ふげん」の技術成果をとりまとめることができたのは、多くの指導者と真摯な先人の努力はもとより各界の関係者各位のあたたかいご指導とご支援の賜物の結果であり、このことに厚く感謝を申し上げる。
 本書は、ATR開発勃興の記録ではない。「ふげん」の開発において、新しい材料、新しい形状、新しい考え方とチャレンジをし続け、常に、リスクに立ち向かい、自己責任の上に立脚し、向上心を怠らなかった技術者たち一人ひとりの貴重な足跡である。
 「ふげん」運転終了の日、サイトにおいて式典を見守る新旧幾多の「ふげん」関係技術者達の顔の一つひとつが、本報告書の全ての頁に投影図のように連なり流れていくような思いがこみあげる。

 取りまとめ作業は運転終了の4年前から着手した。ナショナルプロジェクトの集大成を如何に進めるか等、関係者との協議を踏まえ、「新型転換炉原型炉「ふげん」開発実績と技術成果」(本書)とデーターベースの構築を同時に進めることとした。原稿作成はふげん発電所が主に担当したが、東海事業所をはじめとした関係者並びに諸先輩方にも参考資料の提供など多くのご協力をいただきました。余裕をもった作業期間を設定したつもりであったが、当然ながら「ふげん」の運転管理と同時の作業であり、印刷原稿の完成が遅れ気味であったのは否めない。その結果、各章・各節の内容に粗密が生じる結果となり、先輩方の思いが十分反映されていないところはご容赦をお願いする。さらに詳細な内容等については、インターネットを利用して参照いただけるよう整備を行ったので是非そちらもご覧いただきたい。

 原子力受難の時代ゆえ、「ふげん」の開発、運転において培われた技術や経験が、科学技術立国日本を支える、今の、そしてこれから原子力に携わる技術者の方々に、原点に立ち返った新たな指標作りのヒントの一助となり、その結果、自信と誇りを与え、更に次の夢へと繋がっていけば何よりもありがたい。

 ここから、廃止措置という新たなプロジェクトが始まることとなるが、本書に記された「ふげん」開発の記録が、原子力発電所の廃止措置という、環境の世紀に、原子力技術者の真摯な仕事として、未来を見据えたしっかりとした出発点にならんことを祈り編集の締めくくりのことばとしたい。

 平成15年8月

編集委員会事務局


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